<社説>全基地撤去要求 日米政府は真剣に向き合え

 米軍属女性死体遺棄事件の謝罪に訪れた在沖米四軍調整官に対して、安慶田光男副知事は「沖縄の基地全体について県民は反対する可能性が懸念される。事件に対する県民の気持ちは無視できない。注視していく」と述べ、県民の意思表示によっては全ての在沖米軍基地撤去を求める考えを示した。

 米軍人・軍属による事件が起きるたび、日米両政府は何度も綱紀粛正と再発防止を誓ってきた。しかし事件は起き続けている。今年3月にも観光客の女性が海軍兵に性的暴行を受ける事件が起きた。
 この時、謝罪に訪れた四軍調整官は「良き隣人であるため、良き市民であるため、できる限りのことをさせていただく」と述べ、再発防止を約束していた。それにもかかわらず再び犠牲者が出た。
 県内での米軍構成員による凶悪犯罪は日本復帰の1972年5月15日から2015年末までの約43年間で、574件発生し、741人が摘発されている。殺人が26件34人、強盗が394件548人、強姦(ごうかん)は129件147人、放火25件12人となっている。これらの犯罪は、沖縄に基地が存在していなければ起きていなかった。県民は基地あるが故の犯罪にさらされ続けているのだ。
 事件を受けて会見した女性団体の代表らは「基地がなければ事件はなかった」と涙ながらに訴え、沖縄から全ての基地・軍隊を撤退させるよう求める要求書を日米両政府に送ることを表明した。多くの県民の気持ちを代弁している。
 翁長雄志知事は日米安全保障体制を容認する立場だ。しかし今回の事件を受け、全基地撤去を求める民意は広がりを見せている。安慶田副知事の発言は民意の高まりいかんでは翁長県政として全基地撤去を求める可能性を示したものだ。それだけ相次ぐ事件に危機感を抱いている証左だ。
 オバマ米大統領の広島訪問前に事件が起きたことに触れ、政府関係者が「本当に最悪のタイミング」と発言したことが一部で報じられた。事件そのものではなく、時期が最悪だとの認識だ。別の時期なら事件が起きてもよいのか。犠牲者の無念さに一片の思いも寄せられない冷酷な人間の発想だ。
 これ以上、言葉だけの再発防止策など聞きたくない。全基地撤去を求める声に、日米両政府は真剣に向き合うべきだ。