<社説>勝連ミサイル部隊 説明なき配備は許されぬ


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<社説>勝連ミサイル部隊 説明なき配備は許されぬ
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 地域住民の理解がなくとも装備を増強できると考えているのなら誤りだ。ミサイルなど強引な武器搬入は防衛政策への不信を招くだけである。

 うるま市の陸上自衛隊勝連分屯地への地対艦誘導弾(ミサイル)部隊配備で、防衛省が10日に車両約20台を搬入する計画だ。21日には約160人規模のミサイル部隊が発足する。この部隊が沖縄本島に配備されるのは初めて。中国を念頭に対処力を強化する狙いがある。
 ミサイル配備計画が公になったのは2021年8月である。防衛省の22年度予算概算要求に盛り込まれた。うるま市では計画に反対する市民団体が発足し、反対運動が続いている。今年1月にも400人規模の集会があった。現時点で市民の理解を得た計画とは言えない。このまま配備を許すわけにはいかない。
 解せないのは防衛省が市民に対し、計画の説明をしていないことだ。市民団体は説明会の開催を再三求めている。既存の自衛隊施設内での装備増強と部隊発足なので市民への周知は必要ないとでも考えているのだろうか。
 うるま市の中村正人市長は22年6月の市議会定例会で「周辺住民などの生命や財産に影響が生じる可能性があれば、国に情報の提供を求めたい」と述べている。しかし、23年3月の市議会答弁では中村市長は説明会開催を求めない考えを示した。「(説明会を)働きかける立場にいない」というのが理由だ。
 防衛は「国の専権事項」と言われるが、住民説明が不要というわけではない。住民への説明が不可欠であり、理解が得られなければ計画を見直すか、断念すべきだ。基地を抱える自治体の首長も「国の専権事項」という理由で防衛問題を避けてはならない。
 ミサイル部隊配備に関連し、うるま市石川で防衛省が計画している陸自訓練場も同様だ。市内全自治会、中村市長、玉城デニー知事が白紙撤回を求めている。県議会は7日の本会議で白紙撤回を求める意見書を全会一致で可決する。文字通り超党派で訓練場計画を拒否しているのだ。
 地元の強い反対を受け、防衛省は計画の大幅見直しの作業を進めている。しかし、沖縄側の超党派要求は「白紙に戻せ」ということだ。その意思を重く受け止めるべきだ。
 うるま市は現在でも広大な米軍基地や自衛隊基地が存在している。嘉手納基地を発着する米軍機の騒音被害に悩まされ、海域ではパラシュート降下訓練が実施されている。基地の重圧を背負う市民が住宅地や教育施設に隣接する訓練場に反対し、中国など周辺国との緊張を高め、攻撃対象にもなりかねないミサイル配備に異を唱えるのは当然だ。
 国がどれほど「中国の脅威」を唱えても地域住民の安心・安全に反する計画の実現は困難である。陸自訓練場はその実例だ。防衛省はそのことを認識すべきである。