<社説>米駆逐艦石垣港寄港 軍事力より交流で平和を


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<社説>米駆逐艦石垣港寄港 軍事力より交流で平和を
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 軍事化、戦争準備がまた一段階、進められてしまった。米海軍ミサイル駆逐艦「ラファエル・ペラルタ」が、沖縄県の自粛要請を無視して石垣港沖合に停泊する形で寄港した。軍艦寄港で民間の活動が脅かされ、周辺地域の緊張が高まる。港が標的になる危険もはらむ。軍事力の誇示ではなく、豊かな自然・文化を生かして経済発展を図り、経済と文化の交流で平和を実現すべきである。民間港湾・空港は軍事化すべきではない。

 長さ155メートル、排水量約9648トンの同艦は、クルーズ船バースへの接岸を求めたが、喫水が安全基準を超えているとして不可となった。そこで、沖合に停泊し、民間船に乗り換えて上陸した。何としても寄港実績を作りたかったのであろう。
 石垣港で働く全日本港湾労働組合(全港湾)沖縄地方本部の組合員約50人がストライキに入った。同地方本部の山口順市執行委員長は「職場の安全、労働者自身の安全を守る必要がある」と主張していた。昨年9月の米掃海艦「パイオニア」入港では、自宅待機を検討したが見送っていた。今回はミサイルを装備した大型艦であるため、より強い姿勢に出た。港で働く労働者が軍艦寄港に不安を抱くのは当然である。抗議のためにストライキ権を行使することは理解できる。
 今回の寄港の直前、石垣市議会で野党市議8人が寄港反対の決議案を提出したが、反対13人で否決された。反対討論では「平素から日米両国の交流を含め、市民の理解促進の場として米軍の船が寄港することは日米同盟に資することで、世界平和につながる」など、寄港を歓迎する主張がなされた。地元民意は分断しており、反対は少数派だ。
 政府は、安全保障上必要性が高い空港や港湾など民間インフラ施設を特定利用空港・港湾(特定重要拠点)に指定し整備を進めようとしている。石垣市、宮古島市など5市町の首長らが、同制度に基づく予算獲得を県に要請した。駆逐艦が接岸できなかったことで、整備への流れが加速するかもしれない。
 石垣市内の二つの市民団体が寄港反対を訴える声明を発表した。その中で、1999年に石垣市議会で可決された「石垣市平和港湾宣言」に触れた。今回の市議会の反対決議案でも触れていた。同宣言は「平和で豊かな自然文化都市を目指す石垣市は、今後とも石垣港が、貿易・物流の発展に寄与し、平和と繁栄をもたらす利用の促進が図られるよう宣言する」とうたった。
 1984年に全会一致で議決された「石垣市非核平和都市宣言」を発展させるものとして当時の大浜長照市長が提案した。全国的にも珍しい「平和港湾宣言」だったが、市議会では過半数ぎりぎりの薄氷の可決だった。平和港湾宣言の理想を捨て去っていいのか、改めて議論すべき時ではないだろうか。