<社説>米軍の無謀訓練強行 日米同盟の犠牲拒否する


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<社説>米軍の無謀訓練強行 日米同盟の犠牲拒否する
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 米軍の傍若無人は目に余る。それを容認する日本政府の無策も許しがたい。県民や国民の安全、安心を脅かす同盟関係を放置する日米両政府に抗議する。

 昨年11月の鹿児島県・屋久島沖での墜落事故を受け、全世界で運用を停止していた垂直離着陸輸送機オスプレイの飛行が再開した。普天間飛行場所属機が次々と離陸し、周回飛行をしているのが確認された。同じ日に嘉手納基地では4カ月連続でパラシュート降下訓練が実施された。受け入れがたい暴挙である。
 オスプレイの事故原因は究明されていない。パラシュート降下訓練に関しては日米特別行動委員会(SACO)合意に反するものだ。県や関係する自治体は飛行再開や訓練を容認していないのだ。
 それにもかかわらず米軍はオスプレイの飛行再開とパラシュート降下訓練を強行した。米軍の暴挙と、それを阻止しない日本政府の不作為を受け入れるわけにはいかない。日米両国は対等な関係ではないのか。私たちはこれ以上の日米同盟による犠牲を拒否する。
 林芳正官房長官はオスプレイ飛行再開について「南西地域をはじめとするわが国の防衛のため」と説明し、県や地元自治体の反発について「丁寧な説明に努めていきたい」と述べた。
 事故原因や安全対策についての十分な説明がないままの飛行再開を県や宜野湾市は批判しているのだ。そのことを林氏は認識していないか、意図的に無視していると言わざるを得ない。約3カ月の飛行停止で操縦士の練度が落ちている可能性もある。それにもかかわらず、米軍は通常訓練を実施した。県民が抱く不安を政府は直視すべきである。
 一方、連続する嘉手納基地でのパラシュート降下訓練は昨年12月に始まった。米軍は伊江島補助飛行場の滑走路の状態悪化を挙げている。補修工事完了の時期は示されておらず、嘉手納基地での訓練は長期化する可能性がある。
 1996年のSACO最終報告で読谷から伊江島へ訓練は移転された。ところが2007年に「嘉手納基地を例外的な場合に限って使用」と追加合意し、基地負担軽減を目指す合意がゆがめられた。
 2月の訓練に際しても、木原稔防衛相は会見で「今回の訓練は、『例外的な場合』に該当し、SACO最終報告が形骸化しているとの指摘はあたらない」と述べた。しかし、「例外」だとする訓練が4カ月も続けば、そのような解釈や弁明は通用しない。訓練に抗議する県や周辺自治体を愚弄(ぐろう)するものである。
 構造的欠陥が指摘されているオスプレイの飛行を県民は容認していない。嘉手納基地だけでなく伊江島やうるま市の津堅島沖で実施するパラシュート降下訓練にも県民は強い抵抗感を抱いている。米軍、日本政府はそのことを認識すべきだ。