琉球王国歴代国王の肖像画「御後絵(おごえ)」など文化財22点が米国から沖縄に返還された。1945年の沖縄戦時に米軍関係者が持ち出したものとみられる。第二尚氏第13代国王尚敬と第18代国王尚育の御後絵が含まれている。実物が確認されたのは戦後初めてだ。
再発見は琉球絵画史だけでなく、琉球史研究全般に影響を与える可能性がある。新事実や詳細な解明など今後の研究に大いに期待したい。戦後における沖縄の文化・歴史分野での大発見といえよう。沖縄のアイデンティティーにとっても重要な出来事だ。
一方、琉球王府の最高位の女性祭司・聞得大君(きこえおおきみ)が使ったとされるかんざし「金銅雲龍文簪(こんどううんりゅうもんかんざし)」が国の重要文化財に指定される運びだ。琉球・沖縄の文化財に関するうれしいニュースが続いた。これら貴重な宝を損傷しないよう大切に保管し、後世にどう引き継ぐかが私たちの責務だ。
返還された文化財は御後絵6点、地図1点、陶器、置物などで、御後絵は第4代国王尚清とみられる物もある。
今回、文化財が返還されたのは、県が2001年に御後絵など13点の流出文化財について米連邦捜査局(FBI)の盗難美術品ファイルに登録申請したことがきっかけだ。23年にFBIから22点について照会を受けた県は流出文化財である可能性が極めて高いと判断し返還を依頼した。
御後絵は琉球文化研究者の鎌倉芳太郎が1925年に撮影したモノクロ写真が残されていたが、今回初めて実際の色彩が判明した。戦前に実物を確認した故真栄平房敬氏の証言で約20枚あったことが分かっている。絵は国王の死去から間もなく、その時代に最も優れた絵師が死に顔を描き絵画を仕上げるという琉球独自の文化と言われている。
専門家らは、琉球絵画史や琉球王国時代そのものの研究に役立つだろうと期待している。他の文化財についても、研究を進めることで琉球王国時代の文化や人々のなりわいをさらに解明し、歴史的価値を確立してほしい。
県は今後、有識者委員会を設置し、詳細について調査する。損傷状況に応じて公開を検討する。多くの県民が琉球王国時代の空気を感じ取れるよう公開に向けて取り組んでほしい。公開されれば沖縄のアイデンティティーを育む絶好の機会になるに違いない。
FBIのファイルに登録された13点のうち、今回返還された文化財は尚敬王、尚育王の御後絵2点だけだ。琉米歴史研究会理事長の喜舎場静夫氏は登録だけでなく、県による積極的な働きかけが不可欠だと指摘した。
今回の文化財返還は大きな成果だ。この経験を生かし、さまざまな手法とネットワークで返還に取り組んでほしい。2019年に焼失した首里城の再建と並行して返還の取り組みを地道に続けることが、戦後の沖縄文化の継承・発展にも大きく寄与するはずだ。