<社説>紅こうじサプリ 原因究明し情報公開急げ


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<社説>紅こうじサプリ 原因究明し情報公開急げ
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 小林製薬が製造販売した「紅こうじ」を使った機能性表示食品のサプリメントを摂取した2人が死亡した。摂取後に入院した人は100人を超えている。極めて深刻な事態だ。

 2015年の機能性表示食品の制度開始後、メーカーが健康被害を公表して自主回収する初のケースとなった。想定と異なるカビ由来の成分が原因となった可能性があるが、特定はされていない。
 混乱は全国各地に広がっている。サプリ摂取者の健康被害の実態把握と原因究明を急ぐとともに、消費者の不安を払拭するための的確な情報開示に努めなければならない。
 今回の問題で指摘されているのは小林製薬の公表遅れである。紅こうじサプリとの関連が疑われる健康被害の情報を医師から得たのは今年1月15日だった。2月上旬の時点で、小林章浩社長は腎疾患の症例報告が複数あることを把握していたのである。
 それにもかかわらず小林製薬が健康被害と自主回収に関する情報を公開し、使用停止を呼びかけたのは3月22日のことである。社外52社に紅こうじ原料を供給していたことを公表したのは24日であった。最初の情報を得て2カ月余が経過している。
 健康被害の原因を特定できなかったことが公表遅れの背景にあり、結果的に消費者の不安拡大を招いてしまった。小林社長は「判断が遅かったと言われればその通りだ」と対応の過ちを認めている。
 市販食品による健康被害は決してあってはならない。健康をうたう食品ならなおさらだ。消費者の動揺は当然であろう。小林製薬は消費者の声に誠実に対応すべきである。厚生労働省をはじめ政府関係機関も混乱の収拾を図る必要がある。正確な情報の発信を通じて、混乱を沈静化しなければならない。
 消費者庁は届け出のある機能性表示食品6千件超を対象に緊急点検する方針だ。制度の信頼性を保つ上で必要な措置である。
 機能性表示食品はメーカーの責任で科学的根拠に基づき特定の保健の目的が期待できる旨を表示することができる制度である。国が有効性や安全性について審査する特定保健用食品(トクホ)と異なり、機能性表示食品は国の審査を必要としないが、安全性の確保や適正表示による消費者への情報提供をメーカーに求めている。
 消費者の健康志向に対応した制度と言えるが、メーカー側の安全確保や情報提供がおろそかになるような傾向があれば是正されなければならない。場合によっては制度の厳格化を図る必要もある。
 混乱は県内の食品メーカーでも一部商品の自主回収が出るなど影響が及んでいる。問題があった原料は使われていないが、メーカー側は風評被害を懸念している。事態の沈静化に向け、県関係機関の対応が求められる。