<社説>沖縄に津波警報発表 命を守る教訓としたい


社会
<社説>沖縄に津波警報発表 命を守る教訓としたい
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 貴重な経験と考えたい。ここから得た教訓を生かし、予期せぬ自然災害に備えたい。

 台湾東部で発生した地震で気象庁は沖縄本島、宮古島、八重山地方に津波警報を発表した。県内では4人のけが人が出た。台湾では多数の死傷者が出ており、被害の拡大が懸念される。沖縄から支援の手を差し伸べたい。
 過去にも2010年2月の沖縄本島近海地震、11年3月の東日本大震災の時に沖縄地方で津波警報が出ている。久しぶりの警報で多くの県民は慌てたはずだ。出勤時に重なり、混乱は大きかった。
 路線バスは一部で運行を見合わせ、那覇空港は航空機の発着が止まった。沖縄自動車道も全線が閉鎖した。低地や海岸近くにある公共施設、事業所は業務停止を余儀なくされた。県や市町村行政、消防、警察は住民の安全確保に対処した。病院では医師や看護師らが入院患者の避難対応に追われた。高齢者・福祉施設、保育所も同様である。
 これらの措置や行動は全て命を守るためである。観測された津波の高さは数十センチ規模だが、津波警報に対応した行政組織や医療・福祉施設、県民個々の措置や行動の意義を軽んじてはならない。この経験を今後の地域の防災・減災計画や県民の避難行動に反映させる必要がある。
 沖縄のほとんどの市町村には海岸に近く、標高の低い地域に集落や住宅地、市街地が存在する。それだけに津波襲来時の避難行動は困難が予想される。行政、消防、警察は素早い判断と行動が求められる。災害時のマニュアルを整え、訓練を重ねてきた組織もあるはずだ。
 今回、想定通りの対応ができたのかを検証し、教訓化してほしい。住民への避難呼びかけと避難誘導が円滑だったのかがポイントとなる。多くの自治体は防災マップを製作し、津波など自然災害に備え避難場所を設定している。これらが活用されたのかもチェックする必要がある。必要に応じて防災マップや避難所の更新を進めるべきだ。
 地域においては各自治会が住民避難で大きな役割を果たす。今回、自治会組織による避難誘導は順調だったか点検してほしい。特に高齢者や障がい者の誘導が万全だったか確認する必要がある。
 最終的には個人や家族が命を守る単位となる。今回、避難行動をとらなかった人は、これでよかったのか省みてほしい。地域の避難所や避難ルートの把握、災害時の生活必需品の確保など備えが十分か見直す機会である。避難所などへ向かう車両で各地の道路で渋滞が発生しており、課題を残した。
 津波被害をもたらした能登半島地震から3カ月が過ぎた。避難生活は今も続いている。命を守るための行動はどうあるべきか、行政や地域、家庭で話し合ってほしい。そのためにも今回の経験を忘れず、教訓とすべきだ。