台湾東部沖を震源とするマグニチュード(M)7.7の地震の発生から、6日で72時間が経過した。震度6強の揺れが襲った台湾・花蓮県では6日時点で死者が計13人となり、負傷者は台湾全土で約1100人に上る。
花蓮市と与那国町が姉妹都市として長年にわたり交流を育むなど、花蓮は沖縄と縁が深い都市だ。沖縄からの支援の動きが広がっている。
沖縄にとって台湾との距離は本州より近く、観光やビジネス、留学など相互の往来は活発である。救援と復興の支援を力強く届けるのはもちろんのこと、沖縄と台湾をより一体的な地域と捉え、自然災害のリスクに対処する協力態勢を築く必要がある。
今回の地震では高層ビルの低層部分がつぶれて大きく傾くなど、複数の建物が倒壊した。新たな耐震基準に適応していない老朽化した建物が相次いで倒壊し、被害が広がったと指摘されている。
沖縄地方には東日本大震災以来となる津波警報が出され、与那国島や石垣島、宮古島に津波が到達した。巨大地震や津波はいつ、どこで起きてもおかしくないという意識を持ち、防災力の向上に取り組まなければならない。
花蓮の山間部にある太魯閣(タロコ)国立公園内では、山の斜面が崩れて道路を寸断し、約600人が地域内に閉じ込められた。台湾随一の景勝地として多くの観光客が訪れ、ホテル宿泊者や従業員の約400人が含まれた。道路の一部が開通して孤立の解消に向かいつつあり、懸命の復旧活動が続いている。
沖縄でも災害時には山間部の交通の寸断や、島全体が孤立してしまう事態が懸念される。地域住民だけでなく、観光客や観光従事者も含めた安全確保と備蓄を想定しなければならない。道路や電気、水道が被害を受けても迅速に再開できるよう、日頃のインフラの点検・更新、代替手段の検討が重要になる。
台湾周辺の地下は、プレートがねじれるように沈み込む複雑な構造をしている。1999年に起きたM7.7の地震では2400人以上が死亡するなどした。2018年にM6.7、22年にM7.3の地震が頻発している。
台湾北部の沿岸には複数の原子力発電所が立地する。事故時には日本への放射性物質の飛来が懸念され、原子力規制委員会は与那国島で放射線監視装置(モニタリングポスト)を運用している。今回の地震で原発への影響はなかったが、津波だけでなく、原発事故のリスクも沖縄の近くに存在していることは認識しておかなければならない。
ただ、台湾では福島第1原発事故後に脱原発の世論が高まり、蔡政権で2025年の廃炉達成を目指す政策が進んだ。国境を越える自然災害の脅威に対し、被害を抑えるための研究や対策についても、海を挟んだ“隣人”同士で手を携えていく必要がある。