<社説>石川陸自訓練場白紙へ 整備そのものを断念せよ


社会
<社説>石川陸自訓練場白紙へ 整備そのものを断念せよ
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 うるま市石川への陸上自衛隊訓練場整備計画について、防衛省は地元の反発を受けて予定地への整備を断念することを決めた。木原稔防衛相は「不可能と判断した」と述べた。沖縄本島内の別の場所に検討する構えだ。過重な基地負担を背負っている沖縄にこれ以上の関連施設の新設は認められない。整備計画自体を断念してもらいたい。

 県内ではこれまでにも自衛隊配備や施設建設への反対運動はあったが、今回のような党派を超えた異議申し立ての動きは異例である。住民への説明は後回しにして南西地域への防衛力増強を是が非でも進める国への不信感もある。本島内で代替地を探すというが、県民の反発の中で整備された訓練場を運用することはできないのではないか。
 訓練場では地対空・地対艦誘導弾(ミサイル)部隊の展開訓練、迫撃砲の取り扱い訓練、戦闘訓練などを想定していた。予定地は住宅地に隣接し、最も近いところで6メートルの距離である。県内全域の児童生徒を受け入れ、年間ほぼフル稼働している県立石川青少年の家にも近い。
 国が整備計画をうるま市などに通知したのは、昨年末の閣議決定後だった。住民の要望を受ける形で計画に関する説明会を開いたが、2月に入ってからと時間を要した。
 生活環境が乱されるとの不安の声が予定地の旭区自治会で上がり、反対運動は市全域に広がった。千人規模の市民集会も開かれた。うるま市議会は石川出身の与野党の市議らが沖縄防衛局に反対を伝達。住民からの請願を受ける形で断念を求める意見書も可決した。県議会も白紙撤回を求める意見書を可決した。
 防衛省は訓練場では照明・発煙筒などは使用せず、緊急時などを除いてヘリの運用はしないなどとしたが、理解は得られなかった。
 今月に入り、木原氏は短期間のうちに「交流の場」との併設案や別の候補地探しについて国会などで発言した。観測気球を上げ、市民を揺さぶるような姿勢は許されない。
 今回の計画撤回について木原氏は「地元の状況についての把握、分析が結果として不十分だった」と述べ、地元へのおわびも表明した。当初は住民の懸念など念頭になかったのではないか。
 反対の声はうるま市以外にも広がっている。八重瀬町、中城村、南風原町の議会は白紙撤回や断念を求める意見書、決議を可決した。うるま市議会や県議会での決議を受け、県民として反対の姿勢を示すべきだという各議会の判断である。うるま市での計画を断念した場合、代替地を検討するとされてきたことへの警戒もその背景にはある。
 国は那覇の陸自第15旅団を師団化することで、訓練場が不足する状況に変わりはないとして、本島内で別の候補地を探す考えだ。県民は不安にさいなまれることになる。計画自体を断念すべきだ。