舛添要一東京都知事が辞職した。甚だしい公私混同に関する釈明はどれも苦しく、信頼回復はもはや不可能だった。辞職は当然だ。
だがこれで幕引きにしてはならない。金の使途はあいまいなままである。真相を徹底究明すべきだ。
家族と泊まったホテルで面談した相手は明らかになっていない。本当に誰かと面会したのか。架空の話なら虚偽記載となり、政治資金規正法違反が疑われる。他の飲食費も同様だ。うやむやにしてはならない。
舛添氏に調査を依頼された弁護士は違法性なしと結論づけた。だが彼らは舛添氏から依頼されたのであり、「第三者」ではあり得ない。真の第三者に都議会が委嘱し、使途をきちんと解明して、必要なら刑事訴追すべきである。
再調査でも違法性がないと判断されるかもしれない。それならそれで、ザル法を改正すべきだ。
政治資金規正法では虚偽記載や不記載は違法だが、支出の中身についてはほとんど制限がない。だから違法性がないという理屈である。しかし高級美術品を買い、家族旅行の宿泊や飲食を賄って、全て「政治資金だ」と言われても、納得できる有権者はいるまい。
ザル法は政治資金規正法だけではない。甘利明衆院議員もおとがめなしだ。現職の大臣とその秘書が道路整備の補償交渉に口利きし、国の所管する都市再生機構に「もっと色を付けて」と求め、600万円を受け取ったのに、である。道路整備は経済再生担当相の所管ではないから、あっせん利得処罰法違反の構成要件には当たらないという理屈なのだ。
これでは民主国家とは言えない。これほどの欠陥法を放置するなら国会の自浄能力が疑われる。
舛添氏は公私混同、放漫支出を厳しく指弾されたが、問題は2代前の石原慎太郎氏も同様だった。
石原氏も15回の海外出張で2億4千万円かけたと指摘された。ガラパゴス諸島で高級宿泊船航海をしたこともある。同氏肝いりの美術館事業では自身の四男延啓氏を外部役員に登用し、公費で欧州に出張させた。他の都立文化施設の予算は削る一方、この事業の予算は増え続けた。
議会で公私混同を指摘されても、石原氏は「余人に代え難い」と主張した。こうした在り方を追及し切れず、許したからこそ、現在の問題があるのではないか。都議会の検証能力も問うべきだろう。