発がん性が指摘されている有機フッ素化合物(PFAS)について、米国の環境保護局(EPA)は飲み水の濃度基準を決定した。PFASの中でも代表的なPFOSとPFOAを各1リットル当たり4ナノグラムと決めた。
日本の暫定目標値であるPFOSとPFOAの合計で1リットル当たり50ナノグラムと比べると厳格化している。世界的にも厳しい水準だという。
人体などへの影響が深刻であり、重大な被害の懸念が拭えないことの証左であろう。日本も基準値の設定、目標値の見直しを急ぐ必要がある。加えて、国内で検出されるPFASについて全国規模の調査を実施するべきだ。
県内では、PFASが検出された水源からの水道水の取水を止めていたが、渇水傾向が続き、取水を再開せざるを得なかった。浄水場での処理などで国の暫定目標値をかなり下回る値まで引き下げられ、調査結果もこまめに開示されてはいるが、県民の不安が払拭されたわけではない。
水源などからの検出は米軍基地に由来する可能性が指摘されてきた。県外でも東京の横田基地の周辺住民の血中から高濃度で検出された。
沖縄では基地内での調査を実施しようにも日米地位協定が障壁となり、思うような調査が実現できない現状もある。国の責任で取り組まなければならない課題だ。
PFASは水や油をはじく特性があり、泡消火剤に含有される。昨年、県庁地下から泡消火剤が流出し、流れ込んだとみられる久茂地川からPFASが検出されるという問題があった。米軍以外の汚染源が存在する可能性もある。早急に調べる必要性が高まっているのだ。
環境省は大学や国立医薬品食品衛生研究所などに委託して健康影響についての研究を始める。まだ知られていない人体への影響についても明らかにしてほしい。
国の有識者会議は目標値を再検討するが、現行値の1リットル当たり50ナノグラムは据え置きになる可能性がある。内閣府の食品安全委員会が1月、人が1日に摂取するPFOSとPFOAそれぞれの許容量を体重1キロ当たり20ナノグラムと決めた。これは現行の暫定目標値を算出した際に採用した数字と同じ水準だからだ。
米国の新たな決定がPFOSとPFOAについては安全な摂取量は存在しないとして、強制力のない目標値はゼロと掲げたことからすると、大きくかけ離れている。食品安全委の判断は発がん性など人への影響が判断できないとの見解に立っているが、専門家には因果関係が十分に証明されずとも、対策を講じるべきだとの指摘もある。
欧州でも厳格化の動きがある。目標値の据え置きでは国民の不安を解消するどころか、理解も得られないはずだ。海外の動向を注視しながら、国民が納得できる明確な基準を設けてもらいたい。