<社説>北朝鮮ミサイル 自爆に追い込まぬ対話を


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 北朝鮮が新型中距離弾道ミサイル「ムスダン」の発射実験を強行した。同政府は「成功」を表明、実験の成否は慎重な検証が必要だが、国際社会への軍事脅威は確実に増したと受け止められている。

 これに対し国連安保理の声明は、強い非難と過去の制裁決議の徹底履行を促した。核・ミサイル開発の中止を求める安保理決議を無視して実験を続ける北朝鮮に対する国際包囲網の強化は当然だ。
 ただ北朝鮮の核・ミサイルの軍事脅威論のみに目を奪われ、制裁強化の偏重や、まして軍事的な対抗措置へと前のめりになることは自制しなければならない。
 安保理声明も「北朝鮮との対話を通した平和的な解決」を付記している。国際社会から孤立させず、自暴自棄の軍事強行路線に陥らせない対話の道を確保することが肝要だ。
 新型中距離弾道ミサイル「ムスダン」の射程距離は2500~4千キロといわれ、開発に成功すればグアムや沖縄も射程圏に入る。北朝鮮が米国の軍事力への対抗、報復戦略に傾斜する事態となれば朝鮮有事の際の重要拠点である在沖米軍基地も仮想標的と想定されかねない。
 度重なるミサイル実験の一方で北朝鮮は、米国に対し「敵視政策」の見直しと「平和協定の締結」を求めている。両国間で朝鮮戦争後に休戦協定は結ばれたが、平和協定は未締結のままだ。
 平和協定が結ばれないままの米国の軍事大国化と自国への敵視政策を体制保障への脅威と見なし、核・ミサイル開発を続けているというのが北朝鮮の言い分だ。
 安倍政権下の新防衛大綱策定や日米防衛協力指針改定の議論の中で、北朝鮮の弾道ミサイル発射への対処として「敵基地攻撃能力」の保持が検討された経緯がある。北朝鮮のミサイル発射技術が高まる中で、危険を排除する先制攻撃論が浮上することを危惧する。
 北朝鮮の核開発放棄が先か、米国との平和協定が先かは、ニワトリと卵の議論めいて意見の一致点は見通し難い。体制保障の要求も金正恩体制の存続を図る方便とも取れる。
 国際世論に背を向けた北朝鮮の横暴は看過できない。制裁強化など国際圧力も当然だが、「窮鼠(きゅうそ)猫を噛(か)む」の例えもある。自爆に追い込まぬ粘り強い対話が求められる。