<社説>在沖基地46知事調査 自治の本質から目背けるな


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 日米安保の負担の大部分を背負う沖縄の民意を組み敷いたまま、果たして国防は成り立つだろうか。あるべき姿でないことは明らかだ。

 だが、全国の知事たちは、沖縄への負担偏在の打開という本質論から目を背けているのではないか。そんな疑問を抱かざるを得ない。
 米軍属による女性暴行殺人事件を受けて、琉球新報が実施した沖縄以外の46都道府県知事へのアンケートによると、在沖海兵隊を受け入れるとした知事はゼロで、45都道府県の知事が回答しなかった。辺野古新基地建設計画も「断念すべきだ」とする回答はなかった。
 米軍の特権を温存する日米地位協定を巡って11知事が「抜本的改定が必要」としたものの、事件の再発防止策、在沖海兵隊の引き受け、地位協定改定、辺野古新基地の是非-の重要懸案に関し、大半の知事が具体的な回答を避けた。その理由に「外交・安保は国の専管事項」を挙げている。
 最たる迷惑施設である米軍基地の問題が飛び火することを懸念し、「国の専管事項」という建て前に逃げ込み、思考停止に陥っている。沖縄の基地問題との関わりを避ける消極姿勢が色濃い。
 安倍政権は、辺野古新基地の埋め立て承認を取り消した翁長雄志知事の権限はく奪を意図した、「代執行訴訟」を起こしたが、県の勝訴に等しい和解が成立した。政権にあらがう自治体に対し、究極の手段を臆せず繰り出す強権体質は、地方自治を掘り崩しかねない。全国の自治体が当事者性を持つ、日本全体の問題のはずだ。
 沖縄の基地負担の具体的な解決法が問われる局面になるたび、歴代政権は「国の専管事項」と声高に言い張り、沖縄を含む地方には発言資格がないと主張してきた。
 日米安保の受益者である本土との負担の不均衡が際立つ沖縄にとって、到底容認できない論理だ。異議を申し立てるのは当然だ。
 だが、全国の知事に、沖縄の正当な訴えを支える認識が乏しいことは残念である。本土に根深く息づく「人ごと」の論理の克服が急務の課題であることが改めて照らし出された。
 全国知事会は2015年12月、県の要望を踏まえ、沖縄の基地負担軽減策を検討することを決めた。「専管事項」の呪縛を超え、沖縄の主張に理解を示し、行動することこそ、知事の使命と地方自治の本旨にかなうはずである。