<社説>中央政党政策調査 地位協定を全国的争点に


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 米軍属女性暴行殺人事件を受け、県内では地位協定改定を求める声が高まってる。しかし、今参院選の議論を見ても、地位協定が全国的な争点になってはいない。

 地位協定は米軍人・軍属の公務中の事件の第1次裁判権を米側に与えるなど、在日米軍に多くの治外法権的な特権を与えており、事件や事故、騒音被害や環境汚染などの原因となってきた。沖縄だけに押し込めるのではなく、全国的な課題として論じることが、在沖米軍基地の過重負担解消に向けた第一歩になるだろう。
 本紙が25日までに中央政党9党に実施した政策アンケートでは、共産、おおさか維新、社民、生活、こころの5党が「抜本的改定」を、民進、公明、改革の3党が運用改善などの「見直し」を求めた。自民は「その他」とし、理由で「米軍人・軍属の綱紀粛正、事件・事故防止を徹底し、あるべき姿を検討する」と回答した。
 少なくとも、地位協定は現状から何らかの変更をすべきだとの考えで各党は一致した。
 その上で5党が地位協定の不平等性を問題視する。
 共産は「地位協定は在日米軍に治外法権的な特権を与え、犯罪の重大な土壌だ」と指摘。おおさか維新は「日米が対等の関係に立つことが同盟の維持に不可欠」と主張した。
 社民は「不平等な地位協定の矛盾は沖縄など基地周辺の住民を脅かしている」と訴え、生活は「政府・外務省が米軍、国務省と対等に話ができていない」とした。こころは「米兵、軍属とも一義的に日本の司法制度下で手続きができるよう前進させるべきだ」とした。
 沖縄では県議会が米軍属女性暴行殺人事件に抗議して、辺野古移設断念とともに地位協定改定を求める決議を可決した。事件に抗議した19日の県民大会でも地位協定改定が決議として示された。
 しかし安倍晋三首相は、地位協定上の軍属の扱い見直しを米国と交渉していると説明する。県民が求めているのは軍人・軍属に特権を与え、犯罪の元凶になっている地位協定の抜本的な見直しであるにもかかわらず、だ。
 56年も改定されない日米地位協定は在日米軍全般にかかる問題だ。この国の対米従属の姿をも映し出している。参院選に向けて政策論争の一つとし、各党や候補者の意見を比較し判断する材料としたい。