<社説>テロ7邦人死亡 安全対策見直し命を守れ


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 バングラデシュの開発支援に貢献していた邦人7人が、イスラム過激派によるテロの犠牲となった。

 非道かつ卑劣極まる無差別テロは許し難い。強く非難する。
 日本政府は背景を入念に分析して全容解明を急ぐとともに、邦人の命を守る安全対策を徹底的に見直してもらいたい。
 バングラデシュの首都ダッカで、イスラム過激派とみられる武装集団が外国人でにぎわう飲食店を襲撃した。
 イタリア人や日本人客らを人質にして立てこもり、治安当局が突入して13人は救出されたが、死亡した20人の中に邦人7人が含まれていた。邦人1人は救出された。
 警備が緩やかな「ソフトターゲット」を狙ったことが犯行の特徴だ。中東や欧州だけでなく、日本人が多く滞在するアジアでも無差別テロが起きる現実を直視せねばならない。
 巻き込まれた邦人は国際協力機構(JICA)のプロジェクトに携わっていた。交通渋滞解消などバングラデシュの発展を後押しする志半ばで、命を断たれた本人と遺族の無念を思うと、言葉もない。
 実行犯5人の顔写真を関連サイトで公表していたイスラム国(IS)は、「十字軍を殺した」とする正式な犯行声明を出した。
 地元メディアは、イスラム教の聖典であるコーランを暗唱できない人質が拷問された、と報じている。異教徒の外国人を標的にした残虐な犯行である。バングラデシュ政府は治安部隊突入前に7邦人は殺害されていた、と説明した。
 バングラデシュではISが昨年、外国人らへの聖戦を宣言して以来、襲撃が頻発している。昨年10月には北部で農業開発に携わっていた日本人男性を射殺し、9月にはイタリア人男性も射殺されていた。
 ISは今月5日ごろまで続くイスラム教のラマダン(断食月)中の攻撃を促しており、それに呼応したテロの可能性もある。
 昨年来、ISは日本とイタリアを欧米の軍事作戦に加わる「十字軍」の一員として敵視し、攻撃を呼び掛けていた。今回の犠牲者の大半がイタリア人と日本人だったこととの関連性の検証を尽くさねばならない。
 日本政府はアジアでも邦人が巻き込まれかねないテロが頻発していることを深刻に受け止めるべきだ。国際社会との連携を深め、テロの未然防止と邦人の安全確保に万全を期す対応を取ってほしい。