<社説>中教審提言 長時間労働の原因なくせ


<社説>中教審提言 長時間労働の原因なくせ
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 文部科学相の諮問機関である中教審の特別部会が、公立校の教員確保策について提言をまとめた。柱の一つが待遇改善だ。全国で問題となっている教員不足解消のため、公立学校教員の残業代に代わる「教職調整額」を増額する方針が示された。

 1972年に施行された教員給与特別措置法(給特法)では、公立校教員に残業代を払わないと定めている。その代わり、当時の月平均約8時間の残業に見合う額として、月給の4%を支給してきた。

 中教審提言は現在の4%から10%以上に増やすという内容で、文科省は来年の通常国会に給特法改正案を提出する方針だ。増額については一定の評価はできるが、実際の教育現場の労働時間に見合ったものとは言い難い。教育現場の待遇改善が進むか疑問だ。

 本紙が2023年1月に教員を対象に実施したアンケートでは、月の残業時間について「46~79時間」が35.1%で最も多く、過労死ラインとされる「80時間以上」も19.2%に上った。沖縄で22年度に公立小中高・特別支援学校で精神疾患を理由に休職した教員は229人で過去最多だった。

 教員の本務は授業を通した教育だ。だが、さまざまな雑務に追われ、時間外労働を強いられている人も少なくない。調整額を増やすという小手先の対応ではなく、健康障害や病休につながりかねない長時間労働の根本原因を探って取り除くべきなのだ。

 中教審の提言は、「残業代を支払わない」と規定する給特法の維持が前提となっている。提言を受け、日教組は「長時間労働の現状を是正するには給特法の廃止が不可欠で、提言は不十分だ」と訴えている。一考すべき主張だ。

 業務過多の背景には、国が算定する教員定数が少ないという問題がある。病気休職者や産休・育休取得者を補う教員の確保など増員を求める声は大きくなる一方だが、国の教員定数改善計画は05年で終了したままで、現状に合わせた改定は進んでいない。

 提言では小学5、6年で進めている教科担任制を3、4年に拡大し、学級担任の手当を加算することなども求めたが、疲弊する教育現場の環境を改善するには不十分だ。

 教員定数の算定を見直して十分な教員を確保できるような予算措置がないままでは、現場の教師にしわ寄せがいくのは目に見えている。

 教員が本務に集中できるように、私たちにも意識の改革が求められている。部活動の地域移行をはじめ、これまでの慣習にとらわれずに教員にかかる負担を社会全体で取り除く努力をすべきだ。

 正当な手当も含め、働きたくなる、魅力ある環境を創出すれば、おのずと教職志望者は増えるはずだ。教育は未来への投資だ。教員が心身ともに健康を保って子どもたちに向き合えるよう、政府は積極的な財政措置を図るべきだ。