<社説>参院選 子どもの貧困 解決に向けた道筋提示を


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 子どもの貧困が深刻だ。この問題は雇用、教育、子育てなどと密接に関わるため、参院選の争点の一つとなっている。

 各候補は、子どもたちの将来が生まれた環境に左右されることなく、夢や希望を持って成長していけるよう、貧困問題の解決に向けた道筋を提示してほしい。
 ことし1月に県が発表した子どもの貧困率は、29・9%で全国の1・8倍。子どもの3人に1人が貧困状態に陥っている。
 県の調査によると、父親の年間収入が300万円未満の層で8割強の母親が働いていた。しかし、母親の収入がその世帯の貧困の緩和には十分寄与していない。夫婦共働きをしても多くの世帯は貧困から抜け出せていない。
 背景には、非正規労働者の割合の高さがある。沖縄の非正規雇用率は44・5%(総務省2012年調査)で全国一高い。非正規労働は年を重ねても給与の上昇は見込めない。低賃金で貯金もできない。健康保険や厚生年金の未加入も多く教育費に回す余裕はなくなる。
 子どもの貧困の解決には低賃金の改善や就労安定化など、沖縄の雇用をめぐる構造的な問題に政治が取り組まなければならない。候補者にはその決意を語ってもらいたい。
 県の調査によると、子ども時代に貧しかった人が親になった現在も貧困に苦しむ割合は4割を超す。貧困の世代間連鎖を断ち切るために教育分野の施策が鍵を握る。無料塾の全市町村への拡大や、返済不要な給付型奨学金の拡充などが挙げられる。
 具体的な施策を実現するためには、教育への公的資金支出の拡大が必要だ。日本は国内総生産(GDP)に占める教育機関への公的支出が経済協力開発機構(OECD)加盟国で最も低い水準にある。貸与奨学金の利用で学生が多額の借金を抱えてしまうことが問題化している。教育の公的支出について各候補の考えを明らかにしてほしい。
 一方、子育てについては、認可外保育園の多さや、待機児童の解消も課題となる。県内の全保育施設に占める認可外保育施設の割合は49・7%(15年4月)と全国の24・7%に比べて高い。保育施設の整備や保育士の待遇改善など子育て支援の強化が求められている。公立保育所の民営化についても、各候補は立場を表明してもらいたい。