<社説>県の給食無償化支援 全額公費負担へ国も動け


<社説>県の給食無償化支援 全額公費負担へ国も動け
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 沖縄県の玉城デニー知事は24日、学校給食の無償化に向けた支援事業を2025年度から開始すると発表した。まずは市町村立、県立学校に通う中学生を対象に、学校給食費を全面的に無償とする市町村に対して費用の半額を県が補助する形だ。

 義務教育の一環として、小中学校の給食費は公費で負担することが望ましい。県が無償化の支援に踏み出したことは大きな決定だ。

 ただ、継続的な財源が必要となる給食無償化は、市町村や都道府県任せでは地域差が生じてしまう。教育の機会均等の観点から、やはり国の関与が必須だ。国として全国一律の無償化にかじを切り、全額公費負担を実現すべきだ。

 給食無償化は、家計の負担を軽減し、子どもをめぐる社会的、教育的な格差を是正する効果がある。23年度の給食費の平均保護者負担額は中学生1人当たり4534円、年間で約5万円となる。県の調査で保護者の4割が給食費の負担を感じている。

 特に困窮家庭の中には食費を削り、まともな食事をとれるのは給食だけという子どもがいる厳しい現実もある。「子ども食堂」や食料品の配布事業の取り組みが広がっているが、学校給食が担っている役割は大きい。

 学校給食の起源は明治時代に、山形県の私立小学校で貧しい家庭の子どもたちに無償で昼食を提供したことが始まりと言われている。「子どもの貧困率」が全国の約2倍の高さとなる沖縄県で、栄養バランスの整った給食を安心して食べられる無償化事業は大きな効果が期待できる。

 県内では独自に無償化を実施している自治体もある。だが、コロナ禍や物価高騰対応の臨時交付金など期限付きの財源を充てる事例も多く、安定した財源の確保に難しさがある。

 県としては、必要な費用の半分を補助することで市町村の無償化実施を後押しするのが今回の事業の狙いだ。ただ、県と折半とはいえ、市町村が今後も継続して措置する財源を新たに捻出することは慎重な検証を要するだろう。全県一律で中学生の給食無償化が実現するかは、これから始まる市町村の検討次第だ。

 玉城知事の表明に対し、事前に説明がなかった市町村長からは「受ける自治体と受けない自治体の分断を招きかねない」などの反発も上がる。政治的な立場を超えて「子の最善の利益」の観点で関係者が一致して進めていくためにも、県には市町村との丁寧な対話を求めたい。

 自治体での給食無償化の動きは沖縄県だけではない。都道府県では青森県が10月から全国初で全県一律の無償化を始める。東京都は沖縄県と同様の区市町村への半額補助を実施している。全国的なニーズを背景に都道府県で連携し、国を動かす運動をつくることも沖縄県がリードしていけるはずだ。