<社説>日中韓首脳会談 戦争起こさせない対話を


<社説>日中韓首脳会談 戦争起こさせない対話を
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 約4年半ぶりに日中韓3カ国首脳会談が開催された。安全保障や経済問題での対立を背景に、一致できる範囲に限定した共同宣言になった。それでも隣国同士の3カ国が会談の定例化に努力しようと確認した意義は大きい。あらゆる機会を使って対話し続ける努力が必要だ。

 首脳会談には、日本と中国は首相が、韓国は大統領が出席する。故小渕恵三首相の提唱で国際会議の場を利用して1999年に始まり、2008年から3カ国持ち回りの現在の形になり「日中韓サミット」とも呼ばれた。
 12年に日本の尖閣諸島国有化に反発して中国で反日デモが起き、同じ年の李明博韓国大統領による竹島上陸などで日韓関係も険悪になり、3年間中断した。15年に再開されたもののまた中断し、18、19年に開催された後、コロナ禍もあって途絶えていた。
 19年には元徴用工問題などで険悪だった日韓関係は、韓国の政権交代があり、米中対立の激化で日米韓が軍事的経済的な連携の強化を進めることで好転している。その分、中国との関係は厳しくなった。ウクライナ侵攻を続けるロシアが中国と北朝鮮に接近しており、関係はさらに複雑になっている。
 3カ国首脳会談の前に行われた日中会談では、台湾情勢や福島第1原発の処理水海洋放出などを巡って応酬があった。岸田文雄首相は台湾海峡の安定化を求め、中国の李強首相は「中国の核心利益の核心」と反論した。
 台湾の頼清徳新総統の演説に反発して中国は台湾を包囲する形で演習を行った。露骨な軍事的威嚇だ。大規模な演習は、偶発的な衝突に至る危険がある。もし、米国が関与すれば、在日米軍と自衛隊が巻き込まれ、南西諸島が戦場になりかねない。
 岸田首相が台湾海峡の安定を求めることは当然だが、その一方で「台湾有事」を想定して自衛隊を増強し、米軍との一体化と、民間インフラの軍事利用を進めている。現状は、軍拡が互いにエスカレートして戦争の危険が増す「安全保障のジレンマ」に陥っている。首脳会談で行うべきは、軍備増強、軍事行動をお互いに自制し、流れを軍縮へと転換することである。
 これに逆行するのが、糸数健一与那国町長の「一戦を交える覚悟が問われている」などの発言である。行政の長として不適切であり、反発した町民らが記者会見を開き「あなた一人の島じゃない。1700人が住んでいる」と批判したのは当然である。
 行政の最大の使命は住民の生命と財産を守ることであり、戦争を起こさせないことだ。県は「地方自治体として可能な手法により地域の緊張緩和を目指して力を尽くす」と地域外交基本方針を掲げた。そのために、沖縄を信頼醸成、対話・交流の場にすべきだ。日中韓首脳会談の舞台として沖縄を提案したい。