<社説>自動車5社認証不正 日本車への信頼傷つけた


<社説>自動車5社認証不正 日本車への信頼傷つけた
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 国土交通省は3日、自動車5社から大量生産に必要な「型式指定」の認証申請に関して不正があったことを明らかにした。不正が分かったのは5社の計38車種で、そのうち3社で生産中の計6車種の出荷停止を指示した。

 日本車に寄せられている信頼を深く傷つけるものだ。ただちに不正が起きた原因を明らかにし、対応策を打ち立てるべきである。不正の横行を許すような体質を根本的に改めなければならない。

 不正があったのはトヨタ自動車、マツダ、ヤマハ発動機、ホンダ、スズキの5社。国交省は4日、道路運送車両法に基づき、愛知県豊田市のトヨタ自動車本社に立ち入り検査を実施した。ほかの4社も立ち入り検査し、行政処分を検討する。

 2022年以降、トヨタグループの日野自動車、ダイハツ工業、豊田自動織機で相次いで不正が見つかった。それを受け、国交省は自動車メーカーと装置メーカー85社に不正の有無の調査と報告を求めたところ5社で不正の存在が明らかになった。

 「型式指定」の認証は、自動車メーカーが新型車やエンジンなどを生産する際、国交相へ事前審査を申請し、認証を得ることで、車両1台ごとに受ける検査を省略することができる制度をいう。

 つまり、メーカーが自動車の安全性を検査し、データを提出することで大量生産のお墨付きを得るものだ。前提となるのは自動車メーカーと国、ユーザーとの信頼関係である。不正行為は信頼を損ねるものに他ならない。自動車の大量生産も保証されないのである。

 今回、不正が判明した38車種について5社はいずれも乗り続けても安全上の問題はないなどと説明しているが、それでは済まない。認証申請の過程で安全性が軽視されたのであれば重大である。高い技術力で世界の自動車産業をリードしてきた日本車メーカーの存亡に関わる。このような問題で各社が長期間、生産停止を余儀なくされれば、自動車産業のみならず日本経済全体にも暗い影を落とす。

 グループ本体で不正が判明したことについて、トヨタ自動車の豊田章男会長は記者会見で「認証制度の根底を揺るがすもので、自動車メーカーとして絶対にやってはいけないことだと考えている」と述べた。この認識を各社とも共有しなければならない。

 5社に及ぶ不正の発覚は業界内で不正行為が半ば日常化していることを疑わせるような事態だ。一方で新型車の開発を担う現場は認証を得るために過重な負担を強いられているという指摘もある。

 厳しい国際競争が続く中でも、自動車メーカーは常に安全性を追求しなければならない。現在の型式認証制度が妥当なのか検証する必要もあろう。メーカー各社と政府の関係省庁を網羅した抜本的な対策が求められる。