<社説>経済対策 格差是正、少子化に注力を


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 安倍晋三首相は、石原伸晃経済再生担当相と麻生太郎財務相に経済対策の月内策定を指示した。

 事業規模は10兆円を超える見通しだが、財源と見込む税収の伸びは心もとない。財源不足を補うため、4年ぶりに建設国債を追加発行する。財政規律が緩み一層の財政悪化につながることを懸念する。
 むしろ労働者全体の約4割を占める非正規労働者と正規社員の経済格差の是正、少子化対策など中長期的な課題に本腰を入れて取り組むべきだ。
 首相はアベノミクスが参院選で信任を得たと自負している。しかし、2012年12月の第2次安倍政権発足後、13~15年の国内総生産(GDP)の実質成長率は0・6%にとどまる。実質値は真の実力を示すとされる。日本経済の潜在成長率は0%台だ。日本のデフレ脱却は遠く、政府は16年度の実質経済成長率見通しを0・9%と従来予想のほぼ半分に引き下げる方針だ。
 今回「アベノミクスを再加速」するために首相が示した経済対策の主要項目は、港湾や輸出拠点の整備、復興、防災関連の公共事業が中心だ。アベノミクスというより自民党の旧来型に戻った印象だ。建設現場は人手不足に陥っており、公共事業が期待するほどの経済効果を上げられるか疑問である。
 今やアベノミクスが目指した円高の是正は崩れかけている。英国の欧州連合(EU)離脱問題やテロの頻発などで急速に円高が進む。
 製造業の大企業が16年度に想定した為替レートは1ドル=111円40銭だ。13日は1ドル=103円台で推移し、企業予想を上回る円高水準となっている。ドル円相場が1円、円高に振れると、製造業の大企業は2156億円減益になるとの試算もある。15年度の法人税収は6年ぶりに減収し、16年度も厳しい。経済対策を賄うほどの税収増は期待できない。
 街角の景気実感を示す6月の現状判断指数は、景気後退期だった12年11月以来、3年7カ月ぶりの低水準となった。円高株安の進行で家計や企業に不安が広がっている。政府は中小企業の資金繰り支援を打ち出しているが、財源はどうするのか。
 今回の経済対策で、政府は公共事業に充てる建設国債を追加発行する方針だ。しかし、財源が不明確なまま借金を重ねて将来につけを回すのは無責任だ。