<社説>沖縄子ども調査 孤立させない支援強化を


<社説>沖縄子ども調査 孤立させない支援強化を
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 物価高が生活苦に拍車をかけている。乳児に薄めたミルクを与えたり、スープ1杯で一日の食事を済ませたりする家庭もあった。苦境を訴える家庭を放置してはならない。切れ目のない柔軟な支援が求められる。

 県は2023年度沖縄子ども調査報告書を公表した。調査は5回目で、今回は0~17歳の子の保護者を対象とした。コロナ禍の影響を受けた21年度調査に比べ、低所得層Ⅰ(4人家族、年収260万円未満)の割合は3ポイント減り、世帯収入の上昇が見られたが、物価高騰の影響で「生活が苦しくなった」と感じている人は回答者の約9割に上った。

 県経済は新型コロナウイルス感染症の拡大による経済の落ち込みから回復しつつある。世界的にエネルギーや物品、サービスの需要が高まったことで物価は上がり続けているが、世帯収入が十分に追いついていないのが実態だ。物価高騰で毎月の支出がいや応なく増え続け、生活をひっ迫させているのだ。

 物価高騰の影響は、全ての所得階層で顕著になっている。毎月の支出がどれだけ増えたかの質問には、6割超が1万~4万円未満の範囲で支出額が増えたと回答した。「変わらない」「減った」との回答はわずか3・4%だった。

 食費や住居費、教育費などの基本的支出について保護者の大半が負担を感じている実態が浮き彫りになった。こうした必要経費は切り詰めることが難しく、低所得世帯により大きな負担となっている。

 コロナ禍による経済の低迷とその後の回復基調の中でもたらされた物価高騰が県民生活を直撃し、低所得層に深い傷を残している。玉城デニー知事は「『誰一人取り残されることのない優しい社会』の実現を目指して、全庁を挙げて子どもに関する施策を推進していく」とコメントしているが、具体的な貧困対策をスピード感をもって進めなければならない。

 15年以降、「子どもの貧困」が注目され、支援拡充の必要性が意識されるようになった。成人するまでの0~17歳はそれぞれ安心して生活し、進路決定や就職につなげていく大切な時期だ。今回の調査結果を踏まえ「切れ目のない支援」をさらに強化しなければならない。

 今回の調査で明らかになったのは低所得層、一般層を問わず、全ての階層で生活困窮の波が押し寄せていることである。所得制限の壁を取り払った支援を検討する時期に来ている。

 今回の調査の自由記述では「家賃が収入の半分になり、生活が苦しい」「子どもを施設に預けて命を投げだそうかと考えてしまう」という深刻な声があった。困窮家庭を孤立させてはならない。政治や行政、経済、地域など全てに関わる問題だ。貧困の連鎖を絶ち、全ての人が安心して暮らせる社会を築くための施策展開を急がねばならない。