<社説>仏ニーステロ 日本独自の外交努力を


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 フランス南部ニースで大型トラックが暴走して花火見物に集まった群衆に突っ込み、84人が死亡した。オランド大統領はテロとの見方を示した。

 非道かつ卑劣極まる無差別テロは許し難い。欧米だけでなく、アジアでも邦人が巻き込まれかねないテロが頻発している。日本政府は国際社会との連携を深め、テロの未然防止と邦人の安全確保に万全を尽くしてほしい。
 欧米と違って日本は宗教的、歴史的にイスラム圏との確執はほとんどない。日本人へのテロのリスクを低減するために独自の外交努力を模索すべきである。
 フランス革命記念日の14日夜は全国各地で花火やコンサートなどの催しが行われ、ニースでも市民や観光客らが海岸部で花火を見るために集まっていた。
 隣国ベルギーで3月、逃走中だったパリ同時テロの実行犯が初めて逮捕され、両国の徹底捜査により過激派組織「イスラム国」(IS)の影響を受けた容疑者グループは「ほぼ壊滅した」(オランド氏)はずだった。フランスの治安対策は抜本的な見直しを迫られることになった。
 2001年の米中枢同時テロ以来、米国が主導してきた「テロとの戦い」は行き詰まっている。03年のイラク戦争の混乱が、国際社会をテロの脅威にさらすIS伸長の遠因になったと言われている。
 イラク戦争の大義とされた大量破壊兵器はイラクから見つからなかった。アルカイダ支援の疑いについても、米国防総省ですら「決定的証拠はなかった」と結論付けている。結局、大義はなかったのである。
 参戦国の多くが「判断を誤った」と結論付ける中で、安倍政権は、イラク戦争で米英の武力行使を支持した判断を「妥当」とする立場を維持するという。国際世論と事実に背を向ける態度だ。
 安倍政権は「積極的平和主義」を掲げ、米国に追従する形で対テロ戦争に参戦しつつある。
 安保関連法により国連平和維持活動(PKO)で「駆け付け警護」任務が新たに認められた。早ければ南スーダンのPKOに派遣される部隊が担う可能性がある。イスラム圏から見れば、自衛隊も欧米の軍隊と一体の存在と見なされる。安保関連法によってテロの抑止どころか、むしろ日本人に対するテロのリスクは高まっている。