<社説>全中大会規模縮小 生徒のため丁寧な対応を


<社説>全中大会規模縮小 生徒のため丁寧な対応を
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 全国を目標に部活動に励んでいる生徒や学校、保護者にはショックだろう。日本中学校体育連盟(日本中体連)が全国中学校体育大会(全中)の実施競技の半減を発表した。19競技のうち8競技を2027年度以降、スキーは30年度以降実施しない。

 加盟校の「部活動設置率」が20%未満の競技が除外対象となった。ハンドボールや相撲など沖縄県勢が活躍してきた競技もあり、県内の指導者らからも疑問や戸惑いの声が上がった。水泳や体操など民間クラブが多い競技も設置率が低く、除外対象になった。日本水泳連盟は声明を発表し「急な方針発表に唐突感を持った」と訴えた。

 競技団体との話し合いは十分だったのか。除外競技では、競技団体が独自に全国大会を開催することが求められるが、27年度にできるのか。子どもたちのやる気を大切にし、競技の振興を図るためにも、政府を含め関係各方面の丁寧な対応を求めたい。

 日本中体連の決定の背景には二つの大きな問題がある。一つは教員の部活動指導の負担だ。県内でも、65回を数えた秋の県中学校陸上競技大会が昨年で終了した。県中体連が19年に実施した教員ら約千人を対象としたアンケートで、9割以上が「負担感」に言及したという。教員の負担を軽減する方法として「地域移行」が始まっているが、まだ緒に就いたばかりだ。

 もう一つは、急速な少子化だ。日本中体連の調査では、13~15歳の運動部加盟人数は09年度約233万人が18年度には約200万人に減少した。スポーツ庁は48年度に約148万人になると推計している。団体競技では「1校1チームは既に破綻している」といわれる。

 日本中体連では昨年、地域のスポーツクラブの大会参加に門戸を開いた。今年さらに緩和した。多様なスポーツの場が認められるのはいいことだが、地域クラブに生徒が集まり過ぎると学校側のモチベーションが維持できなくなるという懸念も出ている。

 部活動と大会を巡っては他にも問題がある。一つは生徒の安全確保だ。特に夏休み期間中の大会で酷暑の中での過密日程が生徒の身体に過重な負担をかける。日本中体連でも頭を悩ませているという。

 もう一つは、勝利至上主義だ。スポーツ庁が22年にまとめた「運動部活動の地域移行に関する検討会議提言」は、トーナメント方式が勝利至上主義につながっていると述べ、勝利至上主義がけがや故障を招き「(指導者の)暴言や体罰、行き過ぎた指導等が生じる一因となっている」と述べた。

 部活動は課題山積で、抜本的改革が必要だ。しかし、スポーツ庁提言がうたう「地域の持続可能で多様なスポーツ環境を整備し、子どもたちの多様な体験機会を確保」の実現は簡単ではない。地域や学校でも丁寧な議論が必要だ。