<社説>新規がん100万人超 積極的に検診受けよう


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 2016年に新たにがんと診断される人は、国立がん研究センターの推計で101万200人と初めて100万人を超えた。がんで死亡する人は37万4千人になるとも予測している。

 センターがその年の予測を開始した14年は88万2200人だったが、15年には98万2100人となり、16年はついに100万人超えである。実際の統計でも、患者数は1970年代から増え続けているという。
 高齢者の増加に伴い、発症数が増えることはある意味当然であろう。だが、この傾向を放置してはならない。増加に歯止めをかけることは国民的な課題である。健康的な生活を送れない人が増え続ければ、医療費が増大することにもなる。
 関係機関はがん対策に乗り出している。だが、がん発症を抑制する取り組みは十分な効果を上げていない。新規がん患者の推計からもそれは読み取れる。
 07年に施行されたがん対策基本法に基づく5カ年の基本計画は75歳未満のがん死亡率を10年間で20%減らすことを目標とした。だが、センターの推計では17%減にとどまり、達成は困難視されている。
 厚生労働省は昨年、がん対策加速化プランを策定した。治療・研究面では個人の全遺伝子情報に基づく「ゲノム医療」の推進を掲げている。だが、保険が適用される検査は限られており、海外と比べ見劣りがする。財政的な問題はあるが、保険適用検査を思い切って拡大することを検討すべきだ。
 がんは日本人の約2人に1人がかかり、死因第1位の国民病である。国や自治体は、国民が積極的にがん予防に取り組める環境づくりを、これまで以上に強力に推し進める必要がある。がん対策の点検を踏まえ、抜本的に見直し、より実効性のあるがん対策の確立を急ぎたい。
 一方で、国や自治体がいくら有効ながん対策を実施しても、国民が無関心では絵に描いた餅になる。
 厚労省がん対策推進協議会会長の門田守人・堺市立病院機構理事長は「がん対策の方向性を、予防と早期発見に大きくかじを切る必要性があると国民に広く認識してもらいたい」としている。
 一人一人の心掛け次第でがん発症を防げ、早期発見で重症化も防げる。国民が自らの健康に関心を持ち、積極的に検診を受診したい。