<社説>慶良間ブランド化 沖縄観光底上げの契機に


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 環境省は「ブランド観光地」として世界にPRするモデル事業を、慶良間諸島(座間味村、渡嘉敷村)など8カ所の国立公園で実施する。

 慶良間諸島が選定されたのは(1)長年にわたる地元ダイビング事業者によるサンゴ保全の取り組み(2)座間味、渡嘉敷両村推進協議会がまとめたエコツーリズム全体構想-が高く評価された結果である。
 ブランド化モデル事業選定を機に、両村には自然環境の「保全」と「利活用」のバランスに配慮したエコツーリズムをこれまで以上に推進し、先進地としての地位を確固たるものにしてほしい。沖縄観光全体にも、その効果を波及させたい。
 国立公園のブランド化は訪日客を2020年に年間4千万人とする政府の新たな観光戦略の一環である。15年に430万人だった国立公園を訪れた外国人を、20年に1千万人に増やすことを目指す。
 環境省が15年に実施した調査では、外国人が日本の旅行で体験したいことの2位は「自然」だった。その一方で、訪日客に対する国立公園の魅力のアピールは十分とは言えない。世界水準の「ナショナルパーク」として国立公園のブランド化を図ることで、現状を改善する狙いがある。
 具体的には「国立公園満喫プロジェクト」を実施する。外国人が満喫できる観光メニューや快適な受け入れ環境の整備、質の高いガイドの育成、効果的な海外への情報発信、海外の富裕層を引き付ける質の高い民間施設の円滑な誘致-などを想定している。
 両村は今後、関係省庁と地域協議会を設置し、自然や伝統文化を生かしたツアーの開発などに取り組む。欧州からの客も目立つようになっているといい、欧州のバカンス客をさらに呼び込む工夫も欲しい。ダイビング事業者やエコツーリズム団体の意向を反映させることも忘れてはならない。
 15年度に沖縄を訪れた外国客は167万300人で、前年度比68万4300人、69・4%増加し過去最高を記録した。外国客がストレスなく、観光を楽しめるようにするためには、多くの施設での多言語対応は欠かせない。渡嘉敷村は13年に英語、韓国語、中国語にも対応した観光案内アプリ「とかしきナビ」を開発している。大いに参考になる。
 慶良間諸島国立公園のブランド化の取り組みを全県に広げ、沖縄観光の底上げにつなげたい。