<社説>経済対策 競争力高める戦略必要だ


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 政府、与党は28兆円を超える経済対策を大筋で取りまとめ、日銀は追加金融緩和を決めた。

 経済対策では巨額の財政赤字を抱える中で、財源不足を補うため借金(建設国債)を積み増す。財政規律が緩み一層の財政悪化につながることを懸念する。金融緩和も効果は限定的とみられている。
 公共事業など短期的に経済を下支えするだけでは限界がある。人口減少を食い止める少子化対策、日本の競争力が高まるような戦略こそ必要だ。
 経済対策案は防災対策などの公共事業を行うほか、財政投融資を活用してリニア中央新幹線の大阪延伸を最大8年前倒しし、整備新幹線の建設を加速する。低所得者に1万5千円を給付し、消費底上げを狙う。しかし、建設現場は人手不足に陥っており公共事業の効果はそれほど期待できない。現金給付はバラマキではないか。
 1億総活躍社会の実現を目指し、保育士や介護人材の処遇を改善する。これらの施策の財源を確保するには経済成長による税収増が前提となる。しかし、円高で企業収益が落ちて法人税収を中心に税収の伸びは見込めない。
 内閣府は13日、2016年度の国内総生産(GDP)の実質成長率見通しを1月時点の1・7%から0・9%に引き下げた。来年4月に予定された消費増税10%への引き上げが延期され、駆け込み需要が見込めなくなったからだ。15年度の決算余剰金も2500億円余りにとどまった。
 このため、今回の経済対策は、4年ぶりの国債増発や、民間支出や融資をかき集めて事業費を28兆円超に膨らませる苦肉の策となっている。
 一方、日銀は、金融政策決定会合を開き、上場投資信託(ETF)の購入額を現行の年3・3兆円から6兆円に増やす。決定を受けて金融市場は、内容が不十分として失望感が広がり、円相場は一時1ドル=102円台に上昇、日経平均株価も乱高下した。
 従来の緩和策で市場に資金があふれ、金利は極めて低い水準に下がっている。追加緩和が実体経済を刺激する効果は小さいとみられている。2月にマイナス金利政策を導入したにもかかわらず、円安効果は数日しか続かなかった。財政出動も金融緩和も効かないという憂慮すべき事態に陥っている。打開する戦略が必要だ。