<社説>求人倍率1倍超 雇用の促進と質の向上を


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 県内の6月の有効求人倍率が1・01倍となり初めて1倍を超えた。仕事を求める求職者数を企業の求人数が上回り、県内の雇用の安定にとって、かつてない好条件となっている。

 10年前の2006年6月の有効求人倍率0・46倍と比較して、2倍以上の大幅な改善だ。
 県内の観光関連の宿泊、飲食、流通業などの好景気による採用増、県外の人手不足が相まって、県内外からの求人の増加がプラス要因となった。
 しかし喜んでばかりはいられない。6月の県内の完全失業率は4・6%と、相変わらず全国最下位にとどまる。引き続き就業の促進、雇用の安定が大きな課題だ。そのためには企業からの求人と求職者をいかに結び付けるかが重要だ。
 沖縄労働局の資料で職業別の有効求人倍率を見ると、「サービス」「福祉関連」「管理的職業」「保安」が1・4~1・5倍と高く、企業が求めても人を確保しづらい人材不足をうかがわせている。
 一方で「事務的職業」「生産工程」「農林漁業」「建設」は0・6倍台以下で、希望しても就職が比較的に難しい職種となっている。
 こうした「雇用のミスマッチ」をいかに改善するかが課題だ。
 沖縄労働局は県内の有効求人倍率が1倍を超えたことで、雇用・就業状況が「新たなステージを迎えた」と指摘する。
 職業別求人倍率が示すように、県内でもホテルのサービス業務や介護職など福祉関連の職場などで人手不足の傾向が出てきている。
 企業側もこれまでの雇用者優位の発想を切り替え、雇われる側の立場に立った「雇用の質の向上」が必要と指摘している。給与や勤務時間、福利厚生などの雇用条件の改善が企業に求められている。
 県内は非正規労働者の割合が44・5%(総務省2012年調査)と高い。労働局によると求職者の約7割が正社員を希望しているが、6月の企業正社員求人は29%にとどまる。就業の安定には、正社員採用へのなお一層の企業努力が必要だ。
 15年度に琉球大学を卒業した学部生(医学部医学科を除く)の就職率は96・6%(6月現在)。今春の県内高校卒業生の就職内定率は93・6%(6月末)と好調だ。
 引き続き学校側には密接な進路相談、未決定者への継続的な採用情報の提供を、企業には積極的な求人案内を求めたい。