<社説>北大東レーダー配備へ 島の将来、慎重な対応を


<社説>北大東レーダー配備へ 島の将来、慎重な対応を
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 自衛隊施設の建設は島の姿を大きく変える。村に求められるのは将来を見越した慎重な対応ではないのか。

 北大東村への航空自衛隊移動式警戒管制レーダー配備計画に関する防衛省の住民説明会を受け、鬼塚三典村長は「大方の皆さんが自衛隊配備について、ある程度の理解を示された」などと述べ、事実上計画を受け入れる考えを表明した。近く来島する防衛政務官に村方針を正式に伝える。防衛省は2025年度にも着工する考えである。

 あまりにも判断を急いでいないか。防衛省が北大東島へのレーダー配備決定を村に伝えたのは6月27日である。それからわずか約3週間での受け入れ表明は拙速と言うほかない。防衛省から示された方針を十分に検証したのか疑問である。受け入れありきで物事を進めては将来に禍根を残すことになる。

 防衛省が調査の結果、北大東島をレーダー配備の「適地」と判断したのは昨年7月であり、同月20日に初の住民説明会を開いている。1年後に開かれた今月16日の説明会は2回目である。軍事施設配備という重大な計画をわずか2回の説明会で住民が納得したと防衛省が受け止めるならば過ちを犯すことになる。

 防衛省の対応を見ていると、自分たちのスケジュールに村を従わせて物事を進めようという姿勢がうかがえる。しかし、地域住民の理解がなければ国の防衛政策が立ちゆかなくなるのは、うるま市石川の陸上自衛隊訓練場の整備計画が党派を超えた反対運動で頓挫した事実を見ても明らかだ。防衛省はうるま市の経験に学んだのだろうか。

 村も防衛省のスケジュールに付き従うべきではない。計画に対する疑問や異論が村行政や住民にあるならば、立ち止まって考えるべきである。

 防衛省は24年度予算に必要経費を盛り込み、次年度予算案にも事業費を計上する方針であろう。しかし、国の計画に合わせるのではなく、レーダー配備が北大東村の将来計画に合致するのかを検証し、適切に判断することが村行政に課せられた責務だ。

 北大東島へのレーダー配備計画は、21年12月の自衛隊誘致の意見書可決が発端となっている。「国家の安全保障・防衛基盤充実の地理的観点から北大東村は自衛隊配備の適地である」というのが意見書の趣旨である。急患搬送や災害対応への期待もあった。しかし、議会の期待がかなえられる保証はない。

 むしろ、事前の説明にはなかった基地拡張や機能強化が住民の生活環境に悪影響を及ぼす可能性がある。説明会で住民が地対空誘導弾(ミサイル)部隊を追加配備する陸自与那国駐屯地の例を挙げ懸念の声を上げたのも当然だ。

 島内にある絶滅危惧種や希少な生物への悪影響も心配されている。検討課題は多いのである。村は結論を急ぐべきではない。