<社説>都知事に小池氏 東京一極集中の是正も期待


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 東京都民は首都の新たな顔に元防衛相の小池百合子氏を選んだ。政党の支援を受けずに、過去4番目に多い約291万票を獲得したことは初の女性都知事への都民の大きな期待の表れである。有権者に約束した「都民の、都民による、都民のための都政」の実現を期待したい。

 圧勝したとはいえ、野党が多数を占める都議会をどう乗り切るのか、現時点では不透明である。2020年東京五輪・パラリンピックの準備や待機児童解消への取り組みなど、小池都政には課題が山積する。一つ一つ着実に前進させてほしい。
 2代続けてトップが辞任に追い込まれた「政治とカネ」問題で失われた都民の信頼を回復することも急務である。
 今都知事選は、主要3候補の政策に大きな差はなかった。候補者自身の選挙戦の巧みさが勝敗を分けたと言えないか。政党の取り組みも影響した。
 小池氏は自民党員でありながら、都議会最大会派の党都連を「ブラックボックス」などと批判することで、有権者の目を引き付ける劇場型の選挙戦を繰り広げた。「女性の手による変革」との訴えは、既存政党に対しては持ち得ない期待感や高揚感を有権者に強く抱かせたと言えよう。
 自公などが推薦する元総務相の増田寛也氏は自民党が足を引っ張った。「小池氏を応援したら処分する」との文書を出す姿勢は有権者にどう映ったか。あまりにも強硬な姿勢に反感を覚えた有権者は少なくないだろう。
 政権与党が全面支援した候補が敗れたことで、安倍政権は大きな打撃を受けた。政権への批判の表れとして真摯(しんし)に受け止めるべきだ。
 民進、共産、生活、社民の野党4党が推薦する鳥越俊太郎氏は都政の課題よりも、安倍政権批判や脱原発の主張が目立ち、政策を浸透させることができなかった。
 4党の選挙協力見直し論も出ているが、国政の巨大与党と対峙(たいじ)する視点に立った議論を望みたい。
 小池氏が「都民のための都政」に邁進(まいしん)するのは当然である。一方で、都知事は47都道府県のリーダー的な役割も求められる。都政の前進だけにとどまっていては物足りない。小池氏には中央省庁や大企業の地方移転など、東京一極集中の是正でも指導力の発揮を期待したい。