<社説>人間国宝に新垣さん 多様な染織文化誇りたい


<社説>人間国宝に新垣さん 多様な染織文化誇りたい
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 沖縄の島々に息づく豊かな染織文化に光が当てられた。先人から受け継がれてきた伝統工芸を誇り、伝承者の功績をたたえたい。

 国の文化審議会は県指定無形文化財「八重山上布」を国指定重要無形文化財に指定し、染織家の新垣幸子さんを保持者=人間国宝=に認定するよう文部科学相に答申した。

 人間国宝は重要無形文化財に指定された芸能や工芸技術を高度に体現・体得した人に与えられる称号である。新垣さんの認定で県内の人間国宝は11人、故人を含めると18人となる。工芸技術分野での人間国宝は2年連続だ。

 八重山上布はイラクサ科の苧麻(ちょま)を原材料とした八重山の伝統的な織物製作技法で、琉球王府が課した人頭税の貢納品となった。新垣さんは琉球王国時代の技法の復活に尽くし、後進の養成にも尽くしてきたことが高く評価された。

 石垣島や宮古島に残る古文書を基に人頭税制度下の八重山上布の調査を進めるとともに、日本民芸館が所蔵する琉球王国時代の八重山上布を研究し、伝統的な技法を解明した。石垣市立八重山博物館の「八重山上布復元事業」の中心的メンバーとして活動した。現在、八重山上布保存会の代表として後進の指導・育成に尽くしている。

 これまでも沖縄の染織文化を担ってきた職人や技術者から人間国宝が出ている。紅型の玉那覇有公さん(1996年)、首里の織物の宮平初子さん(98年)、祝嶺恭子さん(2023年)、読谷山花織の與那嶺貞さん(99年)、芭蕉布の平良敏子さん(00年)である。

 染織分野でこれだけの人間国宝が沖縄から生まれたことは、沖縄の染織文化の多様性を証明するものと言える。日本本土とは異なる独自の歴史と風土の中で育まれた文化、人頭税という過酷な税制の中で磨き上げられた技術が、今日まで残る染織文化に結実している。新垣さんの人間国宝の認定答申に当たり、沖縄の染織文化の価値を再確認し、確かな継承を誓いたい。

 文化審議会が今回、「屋根瓦製作(琉球瓦)」と「屋根瓦葺(ぶき)(琉球瓦葺)」を国選定保存技術に選定し、赤瓦職人の八幡昇さんを屋根瓦製作の保持者に、琉球瓦葺技術保存会を保存団体として認定するよう答申したことも意義深い。

 琉球瓦の製作と琉球瓦葺の技術は沖縄の建造文化の特色を成すものである。手作業で瓦を作る技術が途絶えかけている。瓦葺の建物も減少し、琉球瓦葺の技術を体得する技能者が減少している。技術の継承や技術者育成の観点から今回の答申となった。

 赤瓦のある風景は沖縄文化を象徴するものである。現在、再建が進む首里城正殿をはじめ沖縄の建造物には赤瓦の技術は不可欠である。赤瓦の技術を守り育ててきた八幡さんや琉球瓦葺技術保存会の功績に敬意を表したい。