<社説>新学習指導要領案 能動的学習で人材育成図れ


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 画一的で受け身の「知識」の習得にとどまらず、子供たちが自ら考え判断し、行動に移す。中教審の次期学習指導要領のまとめ案からは、次代を担う積極的な人材育成の視点が浮かび上がる。

 2020年度以降にスタートする新学習指導要領に向け、まとめ案は小学校の英語教科化とともに、「アクティブ・ラーニング」の全教科への導入を打ち出した。
 アクティブ・ラーニングとは、教科書を広げ先生の話を聞くだけの授業ではなく、児童生徒が「主体的、能動的に参加する学習方法」とされている。設定されたテーマを児童生徒が自ら調べ、意見を交わし合って発表するグループ学習や、地域の課題を調べ、解決案を提案するなど、主体的で能動的な学習だ。
 沖縄はアクティブ・ラーニングが進んでいると指摘するのは前県教育長の諸見里明氏(昭和薬科大学付属高校・中学校校長)。
 県立総合教育センターが「探求型、ワークショップ型の授業づくり」を進め、学校現場で実践している。全国学力テストで県内の小学校が全国20位へと躍進したのはその成果と諸見里氏は見る。全国から注目され、他府県から県内の小学校の視察が多いという。
 一方、県内の14年度の正規教員率は85・2%と全国最低で、産休育休・病休などの代替臨時教職員を含めると30%以上が臨時教員という不安定な雇用状況だ。過酷な勤務実態も従来指摘されている。
 今回のまとめ案にも大学の英語教育研究者から「忙しい教員が研修を受けられる体制を整えるべきだ」とする注文、教職員組合からも小学校教員の英語力不足の指摘や「教員数を増やさなければ多忙化で倒れる人が増える」と不安視する声が上がった。
 正規教員の拡充、ゆとりのある研修制度の確立が課題となる。
 高校では近現代史を学ぶ「歴史総合」、選挙権年齢の18歳引き下げに伴う「公共」が新設される。
 歴史教育、有権者教育を進める中でも、上からの押し付けでない「主体的・能動的」なアクティブ・ラーニングの手法を大事にしたい。
 沖縄は忘れてはならない沖縄戦、米軍統治下の土地強制接収などの近現代史、選挙の争点ともなる基地問題など教材に事欠かない。
 児童生徒が自ら主体的に考え判断し、行動する社会人へと成長する学習の充実を求めたい。