<社説>辺野古確認訴訟 埋め立て是非で本質突け


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 海は誰のものか。埋め立ては必要か。再び起こる県と国との法廷闘争で、この本質的な議論に司法はどんな判断を下すだろうか。

 翁長雄志知事による名護市辺野古の埋め立て承認取り消しを巡り、国が提起した不作為の違法確認訴訟で、県は答弁書と第1準備書面を福岡高裁那覇支部に提出した。
 国は訴状で、埋め立てと基地建設に関して知事の権限は限定的で、国防は国の裁量に委ねられ、環境保全について「(県が)実行不可能な措置を強いている」と主張している。
 これに対し県は、主に4点で反論した。
 まず、辺野古の海を埋め立てて新基地を造ることの合理性だ。県は「土地利用や海岸管理の点から都道府県知事が総合調整の役割を担う」として、県に海の利用や管理の役割があるとした。公有水面埋立法の観点からも妥当な主張だろう。
 環境保全については、辺野古の海域生物約5800種は、ガラパゴス諸島の約2800種と比較しても生物多様性に富んでいるとし、埋め立ては環境損失だとした。
 知事の取り消し権限については、辺野古埋め立て承認に仮に瑕疵(かし)があっても取り消せないと主張する国と、瑕疵があれば取り消すべきだとする県の主張は真っ向から対立する。
 国が県に是正指示を出した後、国地方係争処理委員会の審査を経ながらも、県が指示に従わず、さらに指示の取り消し訴訟を起こさなかったことが違法な「不作為」に当たるか否かも争点だ。しかし、先の代執行訴訟、国地方係争委の結論がいずれも「双方が真摯(しんし)に協議すべきだ」とした以上、あくまで協議を求める県の対応が違法だと言えるだろうか。
 訴状で国は、米軍への施設提供については「国の政策的、技術的な裁量に委ねられている」とする。
 つまり、国の決定に地方は異を唱えられないと決め付けている。
 地方自治法は国と地方は対等であるとし、国の地方への関与はできるだけ抑えるよう定めている。辺野古新基地建設を巡る国の対応は法の精神に即しているだろうか。
 代執行訴訟は、国が地方に関与する際に必要な手順を踏まなかったという「手続き論」が原因で和解に至った。今訴訟は埋め立ての必要性や環境保全、地方自治など本質を突いた争点に司法が踏み込んだ上で判断を下すべきだ。