<社説>レゾリュート・ドラゴン 露骨な戦争準備、威嚇だ


<社説>レゾリュート・ドラゴン 露骨な戦争準備、威嚇だ
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 陸上自衛隊と米海兵隊の共同実動訓練「レゾリュート・ドラゴン24」が28日から8月7日まで沖縄と九州で実施される。航空機が飛び、ミサイル部隊が展開し、機動戦闘車が走る実戦想定の訓練で、昨年より規模も拡大する。

 訓練は県民生活に負担を強い、墜落などの危険を増大させるだけでない。訓練は戦争準備であり、露骨な威嚇である。緊張を高め、演習の応酬、軍拡の応酬を招く。外交努力がないまま戦争準備だけが進むことを、県民は許すことはできない。日本は平和外交政策に転換すべきだ。

 「レゾリュート・ドラゴン」は「不屈の竜」を意味する。中国への対処を念頭にした米海兵隊の運用指針、EABO(遠征前方基地作戦)のための訓練だ。2021年に始まり、22年まで東北や北海道で実施され、沖縄からは米軍普天間飛行場所属のオスプレイなどが参加した。23年に九州と山口県岩国、沖縄を舞台にした演習となり、陸自西部方面隊約5千人、米側1400人が参加した。陸自のV22オスプレイが新石垣空港に初めて飛来した。今回は陸自が約5700人、米側3200人と規模が拡大する。

 去年との違いは規模の拡大だけではない。日本側の体制が大きく変わった。今年3月21日、陸自勝連分屯地に第7地対艦誘導弾(ミサイル)連隊が発足した。沖縄本島に初めての陸自のミサイル部隊であり、鹿児島県奄美大島、宮古島、石垣島の部隊を束ねる「連隊本部」でもある。

 同日、西部方面隊に第7連隊を配下に置く「第2特科団」も大分県湯布院駐屯地で編成された。九州と南西諸島全体で、台湾有事への正面として増強が進められている。

 さらに、4月の日米首脳会談では、日米同盟の抑止力、対処力の一層の強化は急務とし、自衛隊と在日米軍の連携強化に向けた指揮・統制枠組みの見直しも合意した。

 米海兵隊のEABOとは、小規模の部隊を敵ミサイルの射程圏内にある複数の離島に展開させて攻撃拠点を確保しようという作戦である。攻撃と防御を切り替えながら島を奪い合う戦争になる。そのような戦争をする能力が政府の言う「対処力」なら、それを南西諸島の島々で発揮するということになる。

 政府は「台湾有事」を想定した先島5市町村の住民ら12万人の九州と山口県への避難計画を示している。間に合うのか。住民のいない島はどうなるのか。基地が集中する沖縄本島の住民はどうするのか。避難した九州は安全なのか。このような計画や作戦で県民の生命と財産を守ることなどあり得ないだろう。

 今年秋には日米最大規模の共同統合演習「キーン・ソード」を2年ぶりに実施するという。演習の応酬は偶発的な戦争開始につながる恐れがある。戦争準備にはもう耐えられない。演習ではなく、外交による平和を求める。