<社説>高校生大麻所持逮捕 少年の心寄り添う支援を


<社説>高校生大麻所持逮捕 少年の心寄り添う支援を
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 若者を取り巻く薬物乱用の現状は、極めて深刻な事態だと言わざるを得ない。大麻の植物片約0.11グラムを所持していたとして、宜野湾署は4月、当時高校生だった17歳の少年を大麻取締法違反(所持)の容疑で逮捕した。5月には15歳の高校生が同容疑で浦添署に逮捕されており、高校生の間で大麻が広がっている可能性がある。

 県警によると、今年6月末までに大麻取締法違反で摘発されたのは80人(暫定値)で、そのうち10代が15人(前年同期比1人増)、20代が45人(同11人増)と、摘発された4人に3人が20代以下だ。昨年は県内の中学生が大麻を所持していたとして逮捕されている。

 全国的にも大麻による摘発者は増加傾向だ。厚生労働省などによると、2023年に大麻事犯で摘発された人数は6703人と前年より1157人増え、過去最高を大幅に更新、覚醒剤事犯を初めて上回った。摘発された中学生は前年より10人増の21人、高校生は同80人増の230人と前年を大きく上回っている。

 警察庁の22年の調査では、初めて大麻を使用した年齢層の割合は、20歳未満が52%と、前回調査(17年)の36%から増加した。使用したきっかけでは「誘われて」が、20歳未満では80%と他の年代に比べ高い割合だ。

 大麻の危険性への認識が希薄になっていないか。インターネット上には、大麻の使用で「痩せる」「集中力が上がる」「害はない」などの誤った情報が広がっている。しかし、乱用すれば幻覚や幻聴が現れたり、自分の意思ではやめられない依存の状態になったりする危険性がある。さらに強い刺激を求めて、より毒性の強い薬物に手を染めてしまう例も多い。

 一方、交流サイト(SNS)やアプリを通じ、大麻の入手が容易になっているとの指摘もある。今回逮捕された少年たちもアプリを通じて購入していた。

 誤った情報による警戒心の薄さや入手手段が容易なことが、若者へのまん延を助長している。これらを防ぐためには、薬物乱用防止に向けた啓発活動の強化や、入手先の取り締まりなどを徹底していく必要がある。これまで取り組んできたことを検証し、SNSでの対策も含めた施策につなげてほしい。大手IT企業などSNSサービスを提供する事業者とも、注意喚起の在り方を議論すべきだ。

 少年たちの心の問題にも目を向けなければならない。少年の非行問題に詳しい横江崇弁護士は「少年たちを守るためには、本人が抱えている困難や問題、悩みをできるだけ早い段階で摘み取っていくしかない」と指摘している。

 不安や悩みから、誘いに乗って薬物に手を染めていないか。そうなる前に少年たちのSOSに気づき、さまざまな関わりを通して支えていくことが社会の果たす役割だ。