<社説>粟国空港事故 原因究明し運航体制点検を


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 粟国空港の航空機事故で、極めてずさんな操縦、運航体制が明らかとなった。国交省・運輸安全委員会は事故原因を徹底究明し、運航会社の責任を明らかにすべきだ。

 昨年8月、粟国空港に着陸した第一航空のプロペラ機DHC6が滑走路を外れてフェンスに激突。乗客12人中11人が負傷した。機体前部が大破し、乗客乗員の命が失われかねない重大事故だった。
 安全委の調査報告書案は、第一航空は那覇-粟国便の「路線就航を優先。訓練をおろそかにし、副操縦士が機体を制御できず、機長も対処できなかった」としている。
 操縦していたのは副操縦士だ。副操縦士は本来48時間の座学を16時間しか受けていなかった。会社が予定日通りの就航を優先し、規定の座学時間に満たないのに副操縦士の資格を与え、操縦させていたのだ。
 耳を疑う指摘だ。報告書案は「人的ミス」とするが、十分な座学・訓練を受けさせずに操縦かんを握らせた会社の責任は重大だ。
 さらに報告書案は、着陸に向け「機体前輪を真っすぐに固定する方法について会社の規定に十分な記載がなく、教官も説明していなかった」「知識が不十分で減速操作できなかった」とも指摘する。
 前輪を固定せず、向きも確認しないまま着陸した機体は滑走路を逸脱、フェンスに激突した。
 前輪を固定せずに航空機が着陸することがあり得るのか。前輪の向きによっては機体がさらに大きく転回し、減速もできずに大惨事の事故となった可能性も否定できない。
 副操縦士は「60歳以上の乗員が受けるべき頭部MRI検査などの付加検査」を受けずに乗務していたことも明らかになっている。
 副操縦士の適格性、操縦能力の未熟さ、その原因となった訓練不足、操縦マニュアルの不備など運航体制に数々の疑問が浮かぶ。安全より就航・運航を優先させた疑念を拭えない。
 第一航空は運休中の粟国便の再開に向け、住民説明会を粟国村に求めたが、新城静喜村長は「安全な運航ができるか不信感がある」と断った。村民の命を預かる立場としてやむを得ざる判断だ。
 離島村の空の足の確保は急務だ。同時に安全運航も絶対条件だ。そのために事故原因の全容を解明し、事故を起こさない万全な運航体制を総点検する必要がある。