<社説>沖縄関係予算 振興策の原則ゆがめるな


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 改めて確認しておきたい。基地問題の停滞を理由に沖縄関係予算を削ることは、復帰後の沖縄振興策の原則をゆがめるものであり、断じて許されない。

 翁長雄志知事が菅義偉官房長官と会談し、次年度沖縄関係予算に関する要請を行った。菅氏は「3千億円台の確保はぜひやりたい」と回答した。「リンク論」に関する論議はなかった。
 「2021年度までに毎年3千億円台の予算を確保する」という安倍晋三首相の方針を踏まえた形だ。しかし、菅氏は4日、基地と沖縄振興のリンクを明言し、鶴保庸介沖縄担当相、稲田朋美防衛相も同調した。今後も警戒を要する。
 9日来県した鶴保氏は「予算額ありきという考え方はとっていない」と言明した。「本当に3千億円必要なのかどうか、また3千億円以上のものでなければ絶対になし得ないものはないのかなど、振興策全体の中で考えていく」とも述べた。予算削減の可能性を示唆したものとも言える。
 仮に名護市辺野古の新基地建設と絡めて予算規模を決定することがあっては、沖縄振興策の方向性を根本から覆すことになる。
 菅氏は4日の会見で新基地建設に伴う普天間飛行場跡地利用と予算額を関連付けて「工事が進まなければ予算が少なくなるのは当然ではないか」と発言した。鶴保氏も同趣旨の考えを表明した。
 まるで沖縄関係予算を、在日米軍再編の進捗(しんちょく)に応じて交付金を関係自治体に支給する再編交付金制度に当てはめたかのような発言だ。これでは出来高払いである。
 沖縄関係予算は国の施策に対する協力の度合いではなく、沖縄振興特別措置法に基づき組まれるものだ。菅氏や鶴保氏の発言は法の趣旨を踏みにじるものである。
 同法1条には「沖縄の置かれた特殊な諸事情に鑑み」とある。島嶼(とうしょ)性や米統治に27年間置かれた歴史的経緯、復帰後も続く基地の重圧を指す。これらを打開し、沖縄の自立的発展と豊かな住民の生活を目指すことが沖縄振興策の基本方針だ。
 基地負担の軽減に逆行する新基地建設に反対だからといって、沖縄関係予算を減額することがあってはならない。それこそ復帰44年間積み上げてきた沖縄振興策を否定するものだ。17年度予算も沖縄振興策の原則を踏み外してはならない。