<社説>ゆいレール駅故障 利用客第一に責任自覚を


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 公共交通機関の名が泣くあるまじき事態である。利用客第一の視点が欠けているのではないか。

 沖縄都市モノレール「ゆいレール」の15駅中、6駅で昇降機が故障して使用できず、利用客に不便を来している。エレベーターが3駅で、エスカレーターが3駅で動かなくなっている。修理に時間を要し、使用停止期間は、最長のおもろまち駅で7カ月に及ぶ。
 改札口や切符売り場はゆいレールの管理だが、昇降機などの管理は県が3駅、那覇市が2駅、国が1駅を担っている。行政の怠慢の連鎖という構図が浮かび上がってくる。
 五つの駅で、体が不自由な乗客や高齢者が横断歩道や地下通路を通って、駅の反対側に回って正常に動く昇降機に乗っている。無理してきつい階段を上ったり、便を逃したりした人もいるだろう。
 周知が徹底されていないため、駅を利用して初めて故障に気付く人も多いのではないか。県内外から訪れる観光客が抱く観光地・沖縄のイメージ低下も招きかねない。
 不特定多数の人が利用する駅で昇降機が使えない状況は、障がいのある人たちが暮らしやすい街づくりにも逆行していよう。沖縄都市モノレール社は行政側にどう改善を働き掛けたのか。
 鉄路が発達した本土の万単位以上の乗降客がある主要駅では、昇降機が利用客の流れを制御し、安全確保の役割も果たしている。それはゆいレールでも変わらない。
 もし、本土の駅で昇降機故障が長引けば、たちどころに厳しい批判を浴びるはずである。
 故障の原因は主に設備の経年劣化で、修理の予算確保や部品の調達に時間を要するというが、数カ月に及ぶ利用停止は長過ぎる。
 開業から13年がたつ。設備の老朽化を見越した予算措置が当然なされるべきだ。県、市、国は深く反省して再発防止に努めるべきだ。一刻も早い修理を求めたい。
 ゆいレールの2015年度の乗客数は1615万人を記録し、03年の開業以来、初の1600万人台に乗った。外国人を含めた観光客の利用増や、IC乗車券「OKICA(オキカ)」の普及などが乗客数を押し上げ、「県都の足」として定着した。ゆいレールと行政が足並みをそろえた経営努力は評価できる。
 今回の事態を踏まえ、いま一度、利用客の利便性を保つ責任を自覚し、経営全般を見直してほしい。