<社説>ゆいレール駅故障 縦割り排除し迅速対応を


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 沖縄都市モノレール「ゆいレール」の昇降機が15駅中6駅で故障し使えない問題で、施設を管理する県や那覇市、沖縄都市モノレール、南部国道事務所の4者は、施設をモノレール社が一元管理する方針を確認した。

 時期などはまだ決まっていないが、これまで後手に回ってきた施設管理が半歩でも前進することを期待したい。
 今回分かったのは施設管理に対する責任の所在の曖昧さと利用者視点が各者に欠如していることだ。中でも高齢者や車いす利用者、あるいは沖縄を初めて訪れる観光客といった「交通弱者」の視点がなかったことに猛省を促したい。
 昇降機が故障していても「階段がある」「道路を隔てているが、もう一方は使える」と言えるのは、面倒であっても移動に支障がない健常者の勝手な言い分だ。
 つえや歩行器を使う高齢者や、車いすを使っている人からすれば、道路の反対側に渡ることは相当な困難であり、横断歩道まで遠回りしないといけない国道に面した駅では危険ですらある。
 県は年齢、性別、国籍、身体能力などの個人差にかかわらず、全ての人が利用しやすい環境をつくる「ユニバーサルデザイン」推進指針を2005年に策定している。
 指針の中で交通機関に関する推進の方向として「利用者のニーズに応えることを目的として施策に取り組む」「来県者(旅行者・外国人等)への情報提供を充実させる」とうたっている。
 ゆいレールの昇降機故障問題で浮き彫りになったのは、ユニバーサルデザイン推進の理念が形骸化していることだ。改めて「全ての人が使いやすい」施設の提供を心掛けてほしい。
 問題の背景には駅ごとに国、県、那覇市と管理者が分かれていることもある。それぞれに責任が分散し、縦割り行政の弊害とも指摘されている。モノレール社が施設を一元管理することで、責任の所在を明確にしてもらいたい。ただ保守・点検、修繕といった一連の対応に対する予算支出の仕組みははっきりしていない。予算措置や修繕の優先順位を決めるに当たっては、やはり利用者の視点を大事にすべきである。
 一元管理するモノレール社が迅速かつ適切な対応ができるように各者が協力することだ。「県民の足」という名にふさわしい体制構築を望みたい。