<社説>普天間飛行場補修 運用停止の実現こそ先決だ


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 防衛省は米軍普天間飛行場の格納庫や管理棟、兵舎、貯水槽など19施設を「老朽化が進んでいる」として、日本側の負担で補修することを発表した。予算額は未定のようだが、2013年度から実施してきた5事業約56億円を上回るという。年内に老朽度調査を実施し、大幅補修に着手するようだ。

 補修が完了するのは2~3年後だという。ちょっと待ってほしい。日本政府は普天間飛行場を19年2月までに運用停止にするとの約束を沖縄県知事と交わしているはずだ。運用停止の期限まであと2年7カ月を切っている。期限を過ぎても補修が続けられるとは一体どういうことか。その後も飛行場を運用するとでもいうのだろうか。
 5年以内の運用停止は13年末、仲井真弘多前知事が首相官邸で安倍晋三首相に直接求めたものだ。その時、安倍首相は「最大限実現するよう努力したい」と明言した。仲井真前知事は「一国の総理が言ったことが最高の担保」と述べ、大きな期待を寄せた。その後、政府は起点を普天間飛行場負担軽減推進会議を設置した14年2月と決め、19年2月を返還期限に定めた。
 ところが政府はこれまで、米国と運用停止について一度も正式交渉をしていない。米政府側は「普天間飛行場は代替施設が運用可能になった段階で閉鎖する」として5年以内を否定している。
 運用停止の定義についても二転三転している。15年3月の衆院安保委員会で当時の中谷元・防衛相は運用停止を「飛行機が飛ばないこと」と定義した。しかし1カ月後には同じ委員会で「幻想を与えるようなことは言うべきではない。撤回する」と述べている。運用停止後も滑走路から飛行機が離陸すると説明しているのだ。それは「運用停止」などとは呼ばない。誰にでも分かることだ。
 そして今回の大幅補修の表明だ。政府は運用停止を実現するつもりなどなかったとしか思えない。しかし約束をほごにすることは許されない。政府は「普天間の危険性除去」を繰り返し、安倍首相や菅義偉官房長官も「普天間飛行場は世界一危険だ」と言及しているからだ。
 このまま運用を続けることは、政府が県民を危険にさらしたまま放置することになる。国民の安全を守らない政府があるだろうか。補修工事ではなく、運用停止の実現に努力するのが先決だ。