<社説>教員試験問題酷似 受験の公平性を損なうな


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 入学試験、就職試験を問わず、公平性の確保は受験生にとって極めて重要である。公平性を著しく欠いた出題は試験そのものの信用を大きく損ねてしまう。

 県教育委員会が行う公立学校教員候補者選考試験の英語リスニング試験で、2年度にわたって市販されている1冊の問題集と酷似した設問を多数出題していたことが分かった。
 県教委によると問題作成に当たっては既存の試験問題を参考にしている。しかし、今回の場合、酷似した設問が多く、公平性が厳しく問われているのだ。
 問題作成で参考にしたと見られるのは一般書店でも購入できる旺文社の問題集で、文部科学省が後援する実用英語技能検定(英検)の過去問題などを収録している。県教委が実施した2015年度の英語リスニング試験で少なくとも18問中13問、16年度は18問中8問が酷似していた。丸写しと批判されてもしかたがない。
 旺文社の問題集を購入した受験生は当然、試験には有利だったはずだ。昨年の時点で特定の問題集を参考にした質問が出る傾向を知っていた受験生は事前の対策が可能だった。これでは試験の公平性を確保することはできない。
 県教委は「事実関係を確認中」としており、合否への影響も今後検討するという。公平性への疑義がもたれた以上、県教委は事実関係を明らかにするとともに、全ての受験生にとって公正・公平な問題作成と試験実施に向けた対策を講じるべきだ。
 試験問題は、情報管理のため限られた人数と外部から遮断された環境で作っている。県教委も具体的な問題作成の過程を「公表できない」としている。しかし、その密室性の高い作成過程で今回の問題が起きたのだ。
 県の担当者や教諭、県内研究者によって全問題を作成することが望ましい。しかし、受験生の能力を的確に判断するため、既存の問題を参考にすることはあり得るだろう。県教委も「全ての問題を独自で作成するのは難しい」と説明する。
 独自の問題作成に努め、既存問題を参考にする場合は公平性を確保する基準を設けるべきだ。情報管理を前提に第三者機関によるチェックも必要となろう。
 公平な試験の実施が優秀な職員の採用につながる。県教委はそのことを自覚してほしい。