北朝鮮が24日に潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)を発射した。これに先立ち計3回の弾道ミサイルも発射しており、国連安全保障理事会は強く非難する報道声明を発表した。北朝鮮の核開発を禁じたこれまでの安保理決議に対する重大な違反行為だとしている。
東アジアの軍事的な緊張を高める動きは断じて容認できない。北朝鮮に自制を求めたい。
北朝鮮はこれまで、陸上発射型の弾道ミサイルの射程を延ばしながら配備を進めてきた。日本のほぼ全土を射程に収める中距離弾道ミサイル「ノドン」や、米領グアムが標的とされる新型中距離弾道ミサイル「ムスダン」などがある。6月には、ムスダンの発射に一定程度成功している。
今回発射したSLBMは潜水艦から発射されるので、陸上発射型に比べて事前に発射を予測するのが難しい。発射台が海の中に隠れた潜水艦だからだ。
北朝鮮がSLBMの開発に力を注ぐのは、7月に米韓が米軍の最新鋭迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD)」の韓国配備を発表したことと無縁ではない。
THAADが配備されれば、陸上からの発射は探知され、撃ち落とされてしまう。北朝鮮が築き上げてきた中距離弾道ミサイルの威力が低下し、米国に対するカードとしての機能が低下する。SLBMならTHAADのレーダーに探知されずに攻撃が可能となり、対抗手段となり得る。
北朝鮮だけでなく、米韓などを含む隣国同士による軍備増強を繰り返した結果がこうした状況をつくり出している。
北朝鮮が現時点で、SLBMなどのミサイルに搭載するための核兵器の小型化に成功しているかは不明だ。さらに北朝鮮が所有している潜水艦でSLBMを搭載できるのは、旧ソ連のディーゼル潜水艦を分解して得た技術で建造したとされる1隻だけだ。さらに静粛性で劣り、海上自衛隊関係者から「鐘を打ち鳴らしながら潜っている」と揶揄(やゆ)されるほど、探知されやすい。
これに対して米国は核ミサイル搭載の戦略ミサイル原潜を十数隻も運用している。米国こそSLBMの先駆者であり、親玉だ。北朝鮮だけを非難するのは筋違いだろう。どの国でもあっても、東アジアの緊張を高める軍備増強を進めることは許されない。