<社説>「共謀罪」提出へ 民主主義崩す「悪法」だ

 罪名を変えたところで、市民活動を抑え込み、思想・信条の自由を侵す危うさは消えない。「共謀罪」の新設は必要ない。

 安倍政権は、国会で3度も廃案を重ねてきた「共謀罪」をつくろうとしている。罪名を「テロ等組織犯罪準備罪」に変える組織犯罪処罰法の改正案を、9月の臨時国会に提出する見通しだ。
 2020年の東京五輪に向けたテロ対策を前面に押し出す構えだ。
 昨年11月のパリ同時多発テロ後、自民党内からテロの不安に便乗し、「共謀罪」創設を求める声が出たが、首相官邸は火消しに走った。
 なぜか。国民生活を縛る「悪法」との印象が根強く、今年夏の参院選への悪影響を懸念したからだ。
 7月の参院選で大勝した後、政府は「共謀罪」創設に走りだした。国民受けの悪い施策を封印し、選挙後になって推し進める。安倍政権お決まりのやり方である。
 「共謀罪」とは何か。具体的な犯罪行為がなくとも、2人以上が話し合い、犯罪の合意があるだけで処罰対象となる。
 これまで「団体」としていた適用対象が「組織的犯罪集団」に変わった。市民団体や労働組合を標的にした乱用の恐れがあるとの批判をかわしたつもりだろう。一方、謀議だけでなく、犯罪実行の「準備行為」も罪の構成要件に加えた。
 犯罪集団や準備行為の定義はあいまいで、捜査当局が組織的犯罪集団か否かを判断する構図は変わらない。恣意(しい)的な判断による立件の恐れがある。謀議や準備行為を巡り、盗聴や密告奨励など監視社会が強まる危険性は拭えない。
 治安維持法の下で言論や思想が弾圧された戦前、戦中の反省を踏まえ、日本の刑法は犯罪が実行された「既遂」を罰する原則がある。
 政府は「共謀罪」をテロなどに対処する国連の「国際組織犯罪防止条約」への加入条件とするが、現行刑法でも予備罪や陰謀罪など、未遂以前の段階で処罰する仕組みはある。
 特定秘密保護法、集団的自衛権行使に道筋を開く安全保障関連法の成立など、安倍政権は立憲主義を軽んじてきた。名護市辺野古や東村高江では、新基地にあらがう市民を力ずくで排除している。
 政権への批判に対し、度を越えた反発を示して威圧する狭量が色濃い。この政権が「共謀罪」を手中にする危うさも考えたい。民主主義を掘り崩す制度は要らない。



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