<社説>パトロール職員動員 米軍犯罪抑止にはならない


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 担当外職員までかき集め、パトロールに当たらせることで米軍犯罪を抑止できると考えているのなら大間違いだ。元凶を絶たなければ犯罪抑止は不可能だ。

 米軍属女性暴行殺人事件の再発防止策として政府が創設した「沖縄・地域安全パトロール隊」の要員が、従来の沖縄総合事務局と沖縄防衛局のほか国の出先15機関に拡大していることが分かった。
 沖縄気象台、沖縄労働局、沖縄国税事務所、那覇植物防疫事務所など犯罪抑止パトロールとは縁のない機関も含まれている。出先機関の労組は「平常業務に影響を与える」と反発している。まさに政府総動員だ。
 県民の目から見れば、政府が実施しているパトロール活動が犯罪抑止の抜本策になり得ないことは、はっきりしている。事件を受けて開かれた県民大会で要求したのは在沖海兵隊の削減であり、日米地位協定の改正である。そこに手を付けない限り「綱紀粛正、再発防止」は掛け声だけに終わるのは自明のことだ。
 しかも、防衛省は防犯パトロール要員として沖縄に派遣した職員60人をヘリパッド建設反対運動が続いている東村高江の警備に充てた。犯罪抑止に従事する要員を市民と対峙(たいじ)させるという理不尽な行為は到底許されない。
 パトロール要員の機関拡大に対し、出先機関のうち5官署に支部がある沖縄国公労は「所掌事務を逸脱する行為を強制するもので決して看過できない」として中止を求める文書を菅義偉官房長官に送っている。国公労連は「(パトロールは)一過性の対策で実効性は期待できない」とする談話を発表している。
 当然の主張だ。効果が期待できない上、業務に悪影響を及ぼすようなパトロールへの職員動員が職場に受け入れられるはずがない。
 さらにはパトロール要員を高江の警備に回し、ヘリパッド建設反対を訴える市民を弾圧するような任務を国家公務員に強いる恐れがある。
 2017年度の内閣府沖縄関係予算に沖縄・地域安全パトロール事業費として8億7千万円を計上したのも疑問だ。沖縄振興に資する費用とは言い難い。本来ならば防衛省予算で組むべきである。
 職員動員を強いる前にやるべきことがあろう。なぜ米軍犯罪が繰り返されるのか、元凶を見据え抜本策を講じるべきだ。