<社説>教科書「訂正」 直ちに抜本改善すべきだ


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 2017年度から使用される高校教科書の検定結果を巡り、帝国書院が2回目の訂正を文部科学省に申請し承認された。

 事実誤認の部分はある程度是正されたが、なお不十分である。直ちに抜本的な改善を求めたい。同時に教科書検定の在り方も改善が必要だ。
 帝国書院は今年4月の最初の訂正申請によって「アメリカ軍がいることで、経済効果があるという意見もある」とした。今回は文章をそのまま残した上で「基地返還による経済効果が基地関連収入を上まわる試算もある」との注釈を付けた。注釈はあくまで補完でしかない。今や米軍基地は県経済の阻害要因となっている。基地経済の効果を強調する本文が残る以上、訂正は不十分だ。
 沖縄関係予算を「振興資金」と誤記していた点は「振興予算」に改め、注釈で沖縄関係予算が内閣府沖縄担当部局で一括計上されていることを説明した。国会議事録によると、修正した「振興予算」という表現は09年に初めて登場する。この表現は他県と同じような予算を得ている上に、さらに上乗せされていると誤解される要因になっている。「沖縄関係予算」と表現する方が実態に合っている。
 一方、沖縄戦を巡る記述では、訂正前に「1945年4月、アメリカ軍は沖縄本島に上陸」としていた部分を「3月」と改め、45年4月に米軍が沖縄本島に上陸したことが沖縄戦の始まりだと誤解される文を修正した。この点は評価できる。
 沖縄戦は45年3月23日、米艦載機が慶良間諸島を含む沖縄本島を大規模空襲、26日の慶良間諸島米軍上陸から始まる。慶良間諸島では日本軍の軍事作戦上の指導、強制などによって住民らの集団死が発生した。4月と記述すると、沖縄戦の実相を学ぶ機会が失われてしまう。
 今回、帝国書院は3月に改めたが、山川出版の「詳説日本史 日本史B」など5冊と、第一学習社の教科書は4月としている。これらの教科書も直ちに改めるべきだ。
 帝国書院による2度の訂正は異例である。文科省による最初の訂正申請の審査が不十分だったからだ。沖縄の歴史や現状を反映しない教科書を合格させるのであれば、教科書検定制度そのものに問題があると指摘せざるを得ない。