<社説>保育士不足 待遇改善優先すべきだ


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 保育士確保に向けて県内自治体や保育現場が知恵を絞っている。石垣市は保育士の有資格者への再就職準備費などを最大40~50万円に拡充する。中城村の保育園は、職員の子を預かる事業所内保育園を開設した。いかに保育士が不足しているかを示す事例である。自治体や保育現場だけが背負う問題ではない。

 3年後には保育士が全国で7万人不足すると試算されている。
 県内でも保育士不足は深刻だ。2015年10月時点での保育士の有効求人倍率は2・08倍で、全職種の0・89倍を大きく上回る。それでも人材は集まらず、保育士不足による待機児童は38施設、211人に上った。
 県の13年度調査で、辞めた保育士に聞いたところ、保育所に就職しない理由のトップは「仕事の大変さの割に給料が安い」、次いで「現在の仕事を続けたい」、「家庭と仕事の両立が難しい」などだった。一方、「保育士の仕事に熱意がなく」は3%程度しかない。
 厚生労働省によると、14年時点の保育士の月収(税込み)は21万6千円で全職種平均の32万9千円を大きく下回る。2年未満で辞める保育士が14・9%もいる。
 子どもが好きで、保育士の仕事に魅力を感じて、せっかく資格を取得しても待遇の悪さや育児との両立が図れずに職場を去っている。県内では約4割が非正規雇用で、さらに給与は低く、求人情報などを見ても、月額十数万円にとどまる。
 保育は女性が家庭内で行う無償労働の補助的仕事のように見られ、賃金水準が低いことはこれまでも指摘されてきた。加えて、保育現場は延長保育の導入や入園希望者に対応した定員増などで多忙化が進む。
 政府は「1億総活躍プラン」で保育士の給与を月6千円程度上乗せすると打ち出したが、「大変さの割に給料が安い」との声を埋めるには程遠い。その財源については「今後の税収増」で充てるとし、曖昧だ。
 子どもたちの成長を助ける保育士の確保と待遇改善は社会全体の問題だ。
 「保育園落ちた」という匿名ブログが多くの保護者の共感を呼んだのは記憶に新しい。少子化対策の基盤となる保育士の確保に向け、実効性のある対策を打ち出してほしい。