<社説>パラ五輪開幕 最高峰のプレーに期待する


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 7日(日本時間8日)に開幕する障がい者スポーツの祭典、リオデジャネイロ・パラリンピックには、170以上の国・地域から4350人が参加を予定する。選手が見せる最高のプレーに期待したい。

 日本選手団は17競技に127人が出場を予定し、県勢は上与那原寛和(車いす陸上)、仲里進(ウィルチェアラグビー)両選手がメダル獲得を目指す。
 3大会連続出場の上与那原選手は1500メートルで3分49秒62のアジア記録を持つ。今回は企業や後援会の支援もあり、競技に専念する環境が整った。ロンドンではメダルなしの悔しさも味わった。雪辱を期す45歳の挑戦に注目したい。
 39歳の仲里選手は4大会連続出場で、日本代表で攻守の要となる。外国人選手に当たり負けしない力強さと、周囲の選手を生かすベテランならではの戦術眼を併せ持つ。仲里選手が「史上最強」と誇るチームのメダル獲得を期待したい。
 県関係ではウィルチェアラグビーに沖縄ハリケーンズ所属の乗松聖矢選手(熊本県)が出場、車いす陸上日本代表コーチとして下地隆之氏(バリアフリーネットワーク会議)も帯同する。
 パラリンピック開催に当たり、改めて障がい者スポーツと社会の関わりを考える契機にもしたい。
 日本パラリンピアンズ協会が今年7~8月に行った選手、コーチ・スタッフへの意識調査では、5人に1人が施設利用を断られたり、条件付きで利用を認められたりした経験があると回答した。一方で選手の個人負担額は年間平均で147万円に上る。
 障がい者スポーツはリハビリを目的に始まったが、現在は健常者の五輪と同様、トップ選手の技を競うものに進化している。
 しかし雇用や契約などによる企業支援は増えつつあるものの、まだ多くの障がい者アスリートに対する財政的な支援や、施設利用などへの社会の理解は不足しているのが現状といえる。障がいを理由に施設利用を断るなどあってはならない。
 スポーツ振興法は「適性及び健康状態に応じてスポーツをすることができるような諸条件の整備に努め」るよう国や自治体に義務付ける。文化としてのスポーツに健常者、障がい者の垣根は不要だ。選手が競技に打ち込める環境整備など2020年の東京大会につながるよう、応援だけでなく障がい者スポーツへの理解も深めたい。