<社説>県民投票20年 民意表明の意義は不変だ


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 県民の人権を脅かし続ける米軍基地と日米地位協定に対する沖縄の民意を表明した歴史的意義は不変であることを確認したい。

 在沖米軍基地の整理縮小と日米地位協定の見直しの是非を問うた1996年9月8日の県民投票から20年がたった。投票率59・53%で、賛成票は89・09%だった。
 県民は投票によって、基地の整理縮小と地位協定の見直しを明確に求めたのである。前年に起きた少女乱暴事件に抗議する10・21県民大会で掲げた要求を再び突き付け、日米安保体制の根幹を揺さぶった。
 対米追従に終始し、沖縄への基地集中を当然視する日本政府への異議申し立ては、沖縄の将来を自ら決定するという「自己決定権」の行使であった。「日米安保のくびき」から脱しようという県民の願いを1票に託したのだ。
 しかし、投票で示された県民要求とは逆行する事態がこの20年で進んでいる。辺野古新基地やヘリパッド建設の強行はその象徴だ。
 沖縄の基地負担軽減を標榜(ひょうぼう)したSACO(日米特別行動委員会)や在日米軍再編による基地施策は、沖縄の基地負担を軽減するものではない。辺野古新基地やヘリパッドは基地負担の移転にすぎず、投票で示された県民意思に合致しない。
 逆にMV22オスプレイの配備強行によって米軍普天間飛行場の基地機能は強化された。嘉手納基地に所属するF15戦闘機の訓練移転は実施されたが、外来機の飛来で騒音は増加傾向にある。
 地位協定の改定も実現せず運用改善にとどまっている。米軍属女性暴行殺人事件を受け、日米両政府は地位協定上の軍属の適用対象を狭めることで合意したが、これも弥縫(びほう)策の域を出ない。
 米軍に絡む事件・事故から県民の生命・財産を守る上で、基地の整理縮小と地位協定見直しは最低レベルの要求だ。それが顧みられないことへの憤りと不信感が20年でさらに蓄積されてきたのだ。
 そのことを政府は直視し、率直に反省すべきだ。県民投票で示された民意の延長上に、今日の辺野古新基地やヘリパッド建設への抵抗があることを忘れてはならない。
 県民投票は政府のみならず、安保条約を容認する国民全体に対しても、民主主義に照らして沖縄の基地負担を放置してよいのかを問うものであった。その意義を国民全体で改めて共有すべきだ。