<社説>資材輸送ヘリ投入 工事止め地元に向き合え


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 沖縄防衛局は米軍北部訓練場内のヘリパッド建設で、資材搬入のため民間の大型特殊ヘリの投入に踏み切った。さらに陸自ヘリの使用も検討しているという。県民の根強い反対運動に目もくれぬ強硬措置であり容認できない。

 政府は反対運動の住民を排除するため県外から500人もの機動隊を導入した。自衛隊ヘリの投入をも辞さない姿勢は、国家権力を総動員するかのような強権的な進め方だ。
 米軍基地建設のために手段を選ばぬ政府の対応は、戦後の米軍による「銃剣とブルドーザー」の住民弾圧をほうふつさせる。
 問答無用の工事強行に、反対運動は激しさを増すばかりだ。逮捕者が相次ぎ、一触即発の状況にある。その上、資材搬入にヘリを投入する頭越しのやり方は、火に油を注ぐ暴挙と言わざるを得ない。
 政府は2007年に、米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設に向けた調査の支援を名目として海上自衛隊掃海母艦を投入した。14年にも海底ボーリング調査の支援のため、掃海母艦派遣を検討した経緯がある。
 自衛隊ヘリの投入については、当の自衛隊、防衛省関係者にも「米軍との一体化の批判を受けかねない」と疑問視する声があるという。米軍基地建設に自衛隊が加担することは、自衛隊の本来業務にも反するのではないか。
 県は北部訓練場の過半返還の条件としてのヘリパッド移設を容認した経緯がある。しかし翁長雄志知事は、オスプレイ運用が明らかになった時点で「運用反対」を表明し、政府の工事強行を批判している。伊集盛久東村長もオスプレイの運用に反対している。
 騒音激化に苦しむ東村高江区の住民、多くの県民、県知事が強権的な工事強行に反対、批判を強める中で、地元の声を一顧だにしない政府の姿勢は民主主義国家の名に値しない。
 これ以上の対立激化は流血の事態さえ招きかねない。政府は工事をいったん中止し、虚心坦懐に県や東村、地元住民と話し合うべきだ。
 米海兵隊の「戦略展望2025」には北部訓練場の過半返還について「使用不能な演習場を返還し、最大限に活用する訓練場が新たに開発される」とある。既設ヘリパッドでのオスプレイ訓練の激化で基地機能の強化は明白だ。新たな移設工事は容認できない。