<社説>北朝鮮核実験 包括禁止条約の発効目指せ


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 北朝鮮が5回目の核実験を強行した。「水爆だ」として実施した今年1月の核実験に次ぐ暴挙だ。国連安全保障理事会は「国際平和と安全にとって明らかな脅威だ」として強く非難する報道声明を発表した。北朝鮮の相次ぐ核実験は東アジア地域の平和と安全を危機にさらすものだ。唯一の被爆国として、断じて容認することはできない。

 北朝鮮は2005年2月に核保有を宣言し、06年10月に最初の地下核実験を行った。最初の2回の爆発規模はそれぞれ1キロトン未満と数キロトンにとどまっていたが、5回目は10~12キロトンと推定され、約10倍に拡大している。
 さらに北朝鮮は今年だけでも21発の弾道ミサイルを発射している。核・ミサイル開発が予想を上回るペースで進められている恐れがある。今回の爆発規模に近い威力の核兵器がソウルで使用された場合、死者数は62万人に達するとの試算がある。極めて由々しき事態だ。
 これに対して軍事的に対抗措置を取る動きが出ている。韓国軍は北朝鮮が核攻撃を加えようとすれば、金正恩・朝鮮労働党委員長の体制中枢部を精密誘導ミサイルで同時多発的に攻撃し、特殊部隊も投入すると宣言した。
 さらに韓国国防省は米韓が核兵器を搭載できる米空軍の戦略爆撃機B52やB2の韓国展開を検討していることも明らかにした。北朝鮮に核攻撃力を見せつける狙いのようだが、こうした強硬策では事態を悪化させるだけではないか。
 核実験はこれまで全世界で2300回以上実施されている。最初の核実験は米国が1945年7月に米国内で実施した。その約1カ月後、人類史上最初の実戦使用として広島と長崎に投下されている。
 あらゆる空間での核兵器の核実験による爆発、その他の核爆発を禁止する「包括的核実験禁止条約」が国連総会によって採択されてから、今月10日で20年の節目を迎えた。日本を含む182カ国が署名し、157カ国が批准したが、発効要件国のうち8カ国が未批准のため、発効できないままだ。未批准なのは北朝鮮、米国、中国などだ。
 今回の北朝鮮の核実験に対する非難も必要だが、これを機に国際社会は未批准の8カ国に働き掛けを強めるべきだ。臨界前核実験が禁止されていないなど、条約の不備も指摘されるが、まずは条約の発効を目指す必要がある。